JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告 ホンダロック 自ら学ぶ意欲を培う“創造と挑戦”の風土づくり
宮崎県佐土原町に位置するホンダロックは、本田宗一郎氏が私財を投じて設立したキーロックメーカー。同社では、従業員の自主性を重視し、通信教育を自己啓発の手段として活用。高い参加率となっている。同社の根底に流れる企業哲学と、それに基づいて具体化された施策を紹介する。
従業員の7割が受講する通信教育による自己啓発
ホンダロックは、本田技研工業の連結子会社であり、キーロックをはじめとした自動車・二輪車関連部品を開発・製造している。
今回、同社が通信教育優秀企業賞を受賞した理由の1つとして、毎年多くの社員が自発的に通信教育に取り組んでいる点が挙げられる。通常、全従業員の受講率は2割程度といわれるが、同社は69.7%と、突出して高い。
総務部長の佐藤博俊氏は、次のように語る。
「通信教育はあくまで自己啓発の手段。受講は強制していません。まず自ら考え、学びたいことがあった時に、会社が支援するのが当社の風土だと思っています」(佐藤氏)
同社の風土の根幹をなすのが、創業時から脈々と受け継がれる「ホンダロックフィロソフィー(企業哲学)」である。同社の設立の背景と理念を紐解きながら、自己啓発通信教育制度の活用化ポイントを探っていく。
困難な状況でこそ“創造と挑戦”が生まれる
1962年、宮崎県佐土原町にホンダロックは創設された。創業者、本田宗一郎氏が、宮崎に機械工業を根付かせ、世界に通用するメーカーを育てようと、私財を投じて設立した。
本田氏が、利便性も低く、協力企業もない当時の宮崎に同社を創設したのは、「困難な状況こそ最大のアイデアの条件」という考えから。「何もかもが順風満帆な時、人はあまり考えなくなる。困難な時こそ、状況を好転させるために人は知恵を絞りだすのであり、その環境こそが、成長を促し、イノベーションを生むのだ」という想いが、同社の原点である。
また本田氏は、当初より同社が世界に通用するメーカーになることを視野に入れていた。それには、従業員1人ひとりが自らの技術力を研鑽することが求められる。こうして、スキルや知識を自主的に向上することが奨励されてきた。
「新卒や中途入社の従業員に必ず伝えているのは、当社は自主性を重んじる会社だということ。通信教育に限らず、異動や職務内容にしても、自ら主張できる環境にあります。もちろん上司も支援しますが、自ら考え、学び、行動することが大切だという価値観が創業時から脈々と根付いているんです」(資格制度委員長長友啓喜氏)