JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告 日産化学工業 変革を担うリーダーを育てる現場巻き込み型の自己学習制度
通信教育を人材育成に活用し、自ら学ぶ風土を醸成している企業に対し贈呈される「JMAM通信教育優秀企業賞」。2010年は7社が受賞したが、2010年11月号から3号にわたって受賞企業の取り組みを紹介している。日産化学工業は、25年にわたり自己啓発制度を教育の主軸とし、経営戦略と現場ニーズに沿った通信教育講座を開講、高い修了率を誇っている。
「価値創造企業」を担う次世代リーダーの育成
日産化学工業は、1887年に日本初の化学肥料製造会社として創業した。2010年からは、新たに6カ年の新中期経営計画「Vista2015」を掲げ、海外市場を見据えたさらなる躍進を図る。その第1ステージに当たる2010年度~2012年度の基本戦略の1つが「人材開発の推進」。次世代のリーダー育成を大きなテーマとして、各種教育の施策を講じている。
しかし同社にはそれ以前から、職場で人を育て、学習する風土が根付いていると、自身の経験を振り返って語るのは人事部の小野順一氏だ。
「歴代の社長からは、組織の根幹をなすのは人材であり、学ぶ場を提供することが会社の役目だというメッセージが打ち出されてきました。以前私は経理部に所属していたのですが、その頃から、通信教育の受講や、外部のセミナーへの参加など、学ぶ機会が多数ありました。たとえば新入社員研修も、まずはきちんと学習できる環境を用意するなど、昔から人を大切にし、育ててきた文化があると思います」(小野氏、以下同)
その背景には、同社の扱う素材、特に電子材料や機能性材料に関する技術が、日進月歩で発展していることがある。他社から新技術が1つ出れば、業界のシェアや収益は一転してしまいかねない。よって、常に新しい技術を開発し、次の柱となる事業を確立できる人材を育てていかなければならないのだ。
「当社の成長の原動力は研究開発です。したがって、社員1人ひとりの力を高めることが不可欠になってきます。特に、若手から中堅層が次世代の会社を牽引する人材として育っていかないと、グローバル時代の発展は見込めません」
戦略と現場のニーズ両方を見据えたコース選定
そうした人材を育てるために、同社の教育体系には、さまざまな場面で通信教育が組み込まれている。
とりわけ通信教育活用において着目すべき点は、テーマの選定方法だ。現場のニーズと経営戦略の両面を見据えてコースを選び、受講を促している。具体的に見てみよう。
●現場ニーズに適ったコース選定
25年にわたり継続している自己啓発通信教育制度では、「全社員推奨コース」の他、社歴やスキルに合わせた推奨コースを設定。資格関連コースも設置している(図表1)。