インドで実践する心身を養う 日本的技能教育 「トヨタ工業技術学校」の人づくり
インド南部、郊外の都市に、モノづくりの技能教育を行う職業訓練校、「トヨタ工業技術学校」がある。
経済的余裕がない学生に対し、無償で技能教育の機会を提供。その教育方針は、日本での人材育成をベースにしたものだ。
海外で「日本的人づくり」はどのように機能するのか。同校の実態から見てみたい。
現地での事業展開は地域貢献がカギ
2007年8月、トヨタ自動車(以下、トヨタ)のインド現地法人であるトヨタ・キルロスカ・モーター(以下、TKM)が、「トヨタ工業技術学校」を開校した。インドの南部、カルナータカ州バンガロールに位置する同校は、トヨタが初めて海外に開校した職業訓練校である。
同校設立の背景には、第一に、インド地域社会への貢献という目的がある。現地にその事業体を浸透させるには、地域に貢献すべきというのが同社の考え。特にインドでは、能力があるにもかかわらず、家庭の経済状況が理由で進学が難しい10代が少なくない。こうしたインドの若者に、教育の機会を与えることが同校の大きな目的である。そのため同校では、TKMがある地域の中学校卒業生を対象として入学者を募集。入学金や授業料、寮費はすべてTKMが補助し、手当も支給される。
卒業後はTKMの採用試験を受けることができるが、必ずしも同社に入社しなくてもよいという。TKMに限らず、インドの製造業全体を担う人材の育成をめざしているためだ。
トヨタではかねてから、海外展開において現地での人材雇用・育成にこだわってきた。