CASE 1 大塚製薬 平均女性役員比率の6倍以上を実現! 早期からの男女意識改革と きめの細かい制度を用意
女性MRの比率は業界平均の1.5倍、役員比率も上場企業平均の6倍以上――。
こうした点が評価され、2013年度には、国の『ダイバーシティ経営企業100 選』にも選ばれた大塚製薬。
女性リーダーをどのように育成してきたか、同社の取り組みを聞いた。
● 女性リーダーの活躍状況
36歳で執行役員、再入社も
近年、企業で働き続ける女性の数は増えているが、女性管理職の数はまだ限られている。まして役員となればなおさらだ。実際、上場企業の女性役員の割合は2.1%(東洋経済新報社 役員四季報2015 年版)と、極めて少ない。
これに対し、医薬・食料品メーカーの大塚製薬には女性役員が6人おり、全役員の13%と、上場企業平均の6 倍を上回る。
しかも、6人のうち1人は、36歳の若さで執行役員になり、38歳で常務に就任している。さらに、いったん大塚製薬を離れた後、再び入社して常務執行役員になった女性もいる。
まさに女性が活躍している会社といえるが、女性を特別扱いした結果ではないというから驚く。人事部部長補佐でダイバーシティ推進プロジェクトのメンバーでもある田中静江氏は、「能力がある人を性別や年齢に関係なく登用した結果であり、管理職の数値目標を掲げて女性活用に取り組んでいるわけではない」と語る。
役員に選ばれた女性たちは、いずれも優れた実績を上げており、それを評価された結果なのだ。
例えば、最年少で役員になった女性は、業績が低迷していた化粧品を百貨店販売からネット販売に切り替えて業績を回復させた他、男性用化粧品「UL・OS」(ウル・オス)の開発にも携わり、5 年間で3.7倍もの売上伸張に貢献した。
一方、再入社した女性役員は、ロングセラー商品である「ファイブミニ」の開発を担当した他、「ポカリスエット」を大ヒットさせた実績を持ち、外資系化粧品会社の社長を務めた経験もある。これらが評価されたからこそ、役員に選ばれたのだ。
活躍している女性は、役員だけではない。現在、同社が事業の柱の1つとして力を入れる大豆関連商品のマーケティングにも女性リーダーが携わっている。また、女性がリーダーとして率いるプロジェクトチームが、医薬品の承認申請作業を大幅に短縮したケースもある。さらに、MR(医薬情報担当者)でも、女性たちが多数活躍している。
特別扱いしてきたわけではないとはいうが、どうしたらこれほどまでに女性リーダーを輩出できるのだろうか。その秘密を垣間見てみよう。
● 背景
多様性を大切にする風土
その背景には、“多様性を大切にする”組織風土がある。
同社の企業理念は、「Otsuka-peoplecreating new products for betterhealth worldwide(世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する)」というもの。この言葉は1973年に同社の研究所の理念として掲げられた。また、後に同社の社長そして会長となった故・大塚明彦氏は、グローバル化が叫ばれる前から世界に目を向け、革新的な製品の開発を推し進めていた。
明彦氏は創業家出身の3 代目。「ボンカレー」を開発した他、社長時代にも「ポカリスエット」や「カロリーメイト」など、独創的な商品を世に送り出し、大塚グループの一時代を築いた人物だ。物真似ではない、他にない商品の開発を奨励し、そうした会社の成長の原動力となる革新的な製品やアイデアを生み出すためには、性別などの垣根を越えた多様な人材の活躍が重要だと考えていた。