ID designer Yoshikoが行く 第92回 「こすぎの大学」が育む 主役意識と地元デザイン
毎月第二金曜日の夜、19時28分。この微妙な時間に合わせて、町内会館に集まるナゾの集団がいる。仕事帰りにかけつける会社員、地元商店街の主人、子どもを預けて参加する主婦……。職業もさまざまなら年齢性別もさまざま、趣味を同じくしているようにも見えないオトナたちがテーブルを囲んで座り、時計の針が19 時30 分を指すのをじっと待っている。一様にワクワクした気配を漂わせる、彼らはナニモノ……?
実は、彼らはタワーマンションや大規模商業施設が次々と建ち、ダイナミックな変貌を遂げている注目の街、川崎市中原区の武蔵小杉に「住んでいる人」「働いている人」、そして武蔵小杉が「大好きな人」たちなのである。武蔵小杉、略して「こすぎ」を舞台に、人と出会い、学び合って、よりよい地域デザインを考えようと、2013 年9月にオープンしたソーシャルな学びの場、『こすぎの大学』のメンバーなのだ。
こすぎのこだわりとお楽しみ
「こすぎの大学」には特別なこだわりがある。授業開始と共に集中して学ぶために、19 時30 分を2分前倒しでスタートする「こすぎ時間」もそうなら、21時までの92分間を小学校の4時限授業に見立てて進める「こすぎ時間割」もそうだ。自己紹介と「先生役のお話」から始まり、1時限目は「先生役のお話」についての気づきを書き出す個人ワーク、2時限目はグループで気づきをシェア。その後「席替え」があり、3時限目は、新しいメンバーと「本日のお題」についてダイアログでアイデア交換、そして4時限目はグループごとの発表会で締めくくる。
みんなでワイワイと発表用の絵を描くのに熱中する姿は小学生と変わらないが、ちょっとビールを飲んでリラックスしての参加もOKなのと、授業終了後の放課後には、居酒屋での二次会が待っているのが、小学生にはないお楽しみだ。
地元商店街で眼鏡屋を営む大坂亮志さんから、川崎市副市長の三浦淳さん、川崎フロンターレのプロモーション部部長の天野春果さんまで、毎回、武蔵小杉にご縁のある人を先生役に迎えるこの大学、参加する生徒役は20 ~ 30人が平均だが、最近は80 ~ 100人の規模に膨れ上がることもあり、「超人気校」に成長しつつある。
この大学の仕掛け人、名づけて「企画編集ユニット6355(ムサコ〈武蔵小杉の略称〉の5人の意味)」の1人、武蔵小杉の大手電機メーカーでブランド戦略・マーケティングを担当する岡本克彦さんにお話を伺い、その人気の秘密が見えてきた。