CASE.1 NTTデータ “How to study English”ではなく、 “Why study English”の理念 語学習得の真の意味を全社員に問い続ける
国内システムインテグレーション最大手のNTTデータ。
大型M&Aにより大きくグローバル化を進めており、すでに世界41カ国以上で事業を展開している。
「語学のみの研修体系は設けていない」という同社の独自な英語教育方針について聞いた。
●語学教育の大前提 使う機会を増やす
NTTデータでは、英語をはじめ、語学に特化した研修体系をあえて設けていない。その理由を人事部グローバルHR 担当部長の田中一郎氏は次のように説明する。
「英語を学ぶためのツールは社外にいくらでもある。ですから、単純な“How to study English”には重きを置いていません。それより“Whystudy English”、つまりなぜ英語を学ばなければならないか、について社員に気づきを与えるようにしています」
中期経営計画「2012年度~2015年度:4ヵ年」の中で「グローバルビジネスの拡大・充実・強化」を打ち出しているNTTデータ。2008年からは積極的な海外M&Aを行い、ERP(統合基幹業務システム)事業を中核事業とするドイツのアイテリジェンス社をはじめ、多くの海外有力企業をグループ内に取り込んだ。その後、海外事業を「北米」「EMEA(Europe:欧州、Middle East:中東、Africa:アフリカ)」「APAC(Asia Pacifi c)」「中国」の4つの地域に再編して、横断的な連携を強化している。
現在は世界41カ国以上で事業を展開しており、グループ社員約7 万5000人のうち約4万3000人が日本人以外の社員だ。売上高1兆3000億円(2014年3月期)の22%が海外グループ会社の売り上げである。
今後はさらに海外事業比率を高め、2020 年には海外売上高比率50%(海外売上高1兆円)に引き上げるビジョンを掲げている。それだけに、「日本社員のグローバル対応力強化」がまさに急務となっている。
ただシステムインテグレーションを手がける同社のビジネスモデルは、製造業のように国内で開発・生産した同一の製品を広く海外で販売する、というものではない。現地顧客への直接的な営業や折衝、要件定義はその国の事情や商慣習を熟知している各国の社員が担当する。
そのため、社員一人ひとりがめざすべきは、「①国内外でも通用するような職位に応じた業務遂行力」「②職務に応じた専門力」に加えて、「③それらを文化の異なる環境でも発揮できるグローバル対応力」を備えた「グローバル人材」としている。
だからこそ、大前提として同社社員には仕事のプロであることが求められる。語学力はもちろん重要だが、その一要素という位置づけだ。冒頭の「語学に特化した研修体系は設けていない」という田中氏の言葉は、こうした背景に根ざしている。
力を入れているのは、英語を学ばせることではなく、「英語を使わざるを得ない機会」を増やすこと、と田中氏は言う。各階層や事業分野別に、海外研修を展開。日本語も日本流発想も一切通じない場を体験させ、自ら努力する気持ちに火をつける仕組みをつくっている。