CASE.3 東ソー 仲間意識、挑戦、成長実感── ホワイト企業ランキング1位 日本一“辞めない”会社
全世界に29の拠点を有する総合化学メーカー、東ソー。
新卒社員の入社3年後離職率は、ほぼゼロ%。
社員たちが辞めない理由は、きめ細かな絆づくり、支え合い、そして常に挑戦できる風土にあった。グローバルレベルで進化しつつも、昔ながらの日本企業のよさを貫く工夫、仕組みとは。
● 新卒者定着率の指標「3年間離職率」ゼロ%
新卒社員の採用と育成は、企業経営においてリスクのある投資だ。即戦力が期待できる中途採用と違い、多くのコストと時間と労力がかかる。ほぼ1年がかりで採用広報と選考を行い、入社後は経験と知識のない若手に仕事のやり方を一から教えなくてはならない。やっと会社に利益をもたらすまでに成長した社員を失うことは、企業にとって大きな損失なのは言うまでもない。
東洋経済新報社は毎年、企業のCSRの取り組みについて独自のアンケート調査「CSR調査」を行い、『CSR企業総覧』を出版している。その項目に新卒者が3 年後にどれだけ在籍しているかを見る「新卒3年後定着率」があり、「ホワイト企業ランキング」として上位300社を公開している。それによると2010年4月入社社員の3年後定着率100%の会社は125社(全て同点で1位)。その中で最も新入社員数が多かった日本一の「ホワイト企業」と認定されたのが東ソーである。2010年4月の新卒入社数は男性114人、女性8人の計122人。学歴別の内訳では大卒48人、短・専門卒9人、高卒など65人。この全員が13 年4月時点で会社に在籍している。
厚生労働省の『新規学卒者の離職状況に関する資料』によれば、2011年3月卒の大学卒の3 年後離職率は32.4%。東ソーが該当する就業者数1000人以上の企業に絞っても22.8%ある。122人の新卒入社社員が3 年で1人も辞めないことがいかに凄いかがわかる。この日本一の“辞めない企業”に迫った。
● 風土の素1 「仲間意識」入社後は工場で製造を学ぶ
創業80 年の総合化学メーカーである東ソーは、山口県周南市と三重県四日市市に2 大製造拠点を持つ。2014年3月期の連結売上高は前期比16%増の7723 億円だ。
大卒以上の総合職は全国採用、高卒以上の工場オペレーターは地元採用だ。総合職は新人研修の後、文系理系にかかわらず全員がこのどちらかの工場に配属される。
「製造現場を経験することでメーカーの基本を勉強します。大学を出てすぐ研究職や営業職に就いても、製造のことがわからなければいい仕事はできないからです。文系は経理部門や物流部門、人事部門に配属。工場がどのように運営され、物流がどう動くか、どんな資源を使って製品がつくられ、コスト構造はどうなっているのかといった、メーカーの原点をしっかりと学びます。短期的には戦力になっていないかもしれませんが、長期的な成長性はこの学びにより、大きくなります」と大村朗人事部長は語る。