CASE.2 SCSK「働きがい」の基本はワークライフバランスにあり経営トップが社員を巻き込み「働き方」を改革
ダイバーシティ、人材育成、健康管理など、合併前から「働きがい」を高めるためのさまざまな仕組みを構築してきたSCSK。
しかし、大切なのは個別の施策より、ワークライフバランスそのものの向上、と悟る。
長時間労働が当たり前だったIT 業界において、労働時間を大きく減らし、ワークライフバランスの改善に努力した同社の取り組みを探る。
● IT 業界の事情 長時間労働は「当たり前」か?
コンピューター・システムは24時間365日、止まることなく稼働させなければならない。そのため、お客様はごく自然な気持ちで24 時間体制のサポートを期待し、IT会社側もそれに応えるのが使命、という認識を持ってきた。常に変化にさらされており、進化のスピードが速い、という業界事情もある。SCSKの執行役員で人材開発部長の河辺恵理氏も、かつては深夜3 時まで残業し、翌朝9 時に出社するような生活を当たり前にしていたという。
2011年10月、住商情報システム(SCS)はCSKと合併してSCSKとなる。両社の組織や文化を統合・リニューアルする中で、長時間労働を是とする認識を根本的に改めようと立ち上がったのは、住友商事副社長から同社の会長兼社長(現会長兼CEO)に就任した中井戸信英氏だった。
昼休みになると、多くの社員が机に突っ伏して寝ている。その姿を見て、中井戸氏は「この会社は人を大事にしていない」と感じた。
「『まずは働く環境を変える』と言い、取り掛かったのが引っ越しでした。すぐに東京都中央区晴海から、江東区豊洲の広く新しいオフィスへと本社を移転しました。1人当たりのワークスペースを1.5 倍に拡大しただけでなく、社員食堂、診療所、リラクゼーションルームなども整備しました」
中井戸氏は働く環境を整えると、今度は「社員の働き方を変える」と決めた。
●「働きがい」の基本 ワークライフバランス
合併前から住商情報システムでは、「働きがい」に注目し、ダイバーシティや人材育成などに力を注いできた、と河辺氏は振り返る。
例えば、ダイバーシティの面では、女性の活躍を促すために、育児と仕事を両立できる制度を数多く整えている。定時帰宅や育児休暇はもちろん、会社の近隣に引っ越せば、引っ越し代の50%を支給したり、保育所にかかる費用の50%を支給したりと、かなり手厚い内容である。
しかし、そこまでしても、女性社員の働きやすさはあまり向上しなかった。「ほかの社員は皆、遅くまで働いているのに、自分だけ先に帰るのは不安」とか、「大事なことは夜の会議で決まる。意思決定に参加できない」など、ビジネスパーソンとしてのキャリア形成に不安を抱き、安心して働けないと訴える声は相変わらず多かった。