TOPIC NPOカタリバ × 内田洋行教育総合研究所 教育グッドプラクティスセミナーレポート 中原淳氏、酒井穣氏が今、語る「 学びの風景2020」
去る、2011年11月5日、『学びの風景2020』と題したセミナーが 内田洋行 ユビキタス協創広場CANVAS(東京都・中央区新川)にて開催された。
同セミナーは、特定非営利活動法人NPOカタリバと内田洋行教育総合研究所が主催するもの。
講師には中原 淳 氏と酒井 穣 氏が招かれ、「2020年の学びの風景」を大いに語り合った。
二氏、そして参加者が描く未来の学びの風景とはどのようなものだったのだろうか。
2020年の学びの姿を考えるセミナー
『学びの風景2020』―― 2020年の学びはどのようなものかという、未来をテーマにしたセミナーが、2011年11月5日に開催された。
第1部「ストーリーテリング」では講師として、東京大学 大学総合教育研究センター准教授 中原淳氏と、フリービット取締役 酒井穣氏が、それぞれがイメージする2020年の学びの風景を発表。
第2部では、会場の参加者たちがグループをつくり、参加者自身が考える学びの風景についてディスカッションをするというスタイルで開催された。
まず行われたのは酒井氏の講演だが、酒井氏は、同セミナーを主催する特定非営利活動法人NPOカタリバで理事を務めている。その酒井氏の考える『学びの風景2020』とはどのようなものなのだろうか。
【ストーリーテリング】ビジネスアスリートとして自らを鍛える学びが必要酒井穣氏 フリービット 取締役/NPOカタリバ 理事
酒井氏は、まず今回のテーマにある「学び」という言葉に着目。「教育」と「学び」の違いについて自身の考えを次のように説明した。「2つとも成長をめざしたものですが、“教育”は本人以外の誰かが責任を負っているものであるのに対し、“学び”は本人が学習の主体であり、自分自身が責任を負うものではないでしょうか。それを踏まえたうえで学びの風景を考えていきましょう」
未来の日本の学びを考えるに当たり、酒井氏は現在の日本社会を取り巻く社会問題に言及。中でも、学びに大きな影響のある日本の社会問題のひとつが、経済的格差の問題だ。「OECD (経済協力開発機構)30カ国の中で日本の相対的貧困度は第4位という高い水準。そして厚生労働省の調査では国内でも15.7%の人が貧困状態にあるといわれていますが、この調査を受けて、阿部彩氏(国立社会保障・人口問題研究所
社会保障応用分析研究部長)は、日本では、326万人の子どもが貧困家庭で育っていると試算しています。この貧困率は増加傾向にあり、しかも経済力が豊かな子どものほうが、そうでない子どもよりも学力が高い傾向にあるという調査結果も出ています。日本が貧困から目を背けることができなくなっている今、学びにおいてめざすテーマも、現状のものから変わるべきではないでしょうか」
そこで酒井氏は、現状の「個性を発揮することを目的にした教育」から、今後は「厳しい時代を生き残ることができるビジネスアスリートになるための教育」へとシフトすべきと提言する。「現在、ITをはじめとした技術が急速に進歩を遂げています。これまで人間が行ってきた仕事がコンピュータでもできるようになり、ますます雇用が少なくなる恐れすらあるのです。環境がこれまでとは大きく変わろうとしているいわゆる“GreatReset”が起きていることを我々は認識すべき時に来ている。失業率が向上し続けているような厳しい環境下においても、『才能を発揮して個性を生かすことが大切』といい続けられるのでしょうか。厳しい環境の中で生き残る力が必要なのです」