TOPIC② 社会変化に対応した人と組織を創る「 能力開花―KAIKA―」プロジェクト
個人の生き方や価値観が多様化し、社会に求められる豊かさも一様ではなくなった。それゆえに、変化に富む社会に対応し、豊かさに貢献できる企業こそが、将来の市場競争において優位に立つことができるといえる。そこで社団法人日本能率協会(JMA)は、「能力開発優秀企業賞」の概念を発展させ、「個」の成長と「組織」の活性化、「社会」への貢献をスパイラルアップさせる「能力開花―KAIKA―」を提唱。賞も「能力開花大賞」へとリニューアルした。その概要と期待される効果を紹介する。
能力開発から能力開花-KAIKA-へ花田光世 慶應義塾大学 総合政策学部 教授 SFCキャリアリソースラボラトリー代表
リニューアルの背景
1988年から日本能率協会が授与していた能力開発優秀企業賞が、2012年9月、新たに能力開花大賞(KAIKA Awards)として衣替えをすることとなりました。賞の獲得をめざして努力してこられた企業の能力開発担当の多くの皆様や、賞を獲得された企業の皆様にとって、「どうして変わるのか」「なぜこの時期なのか」という疑問を持たれたかもしれません。
能力開発優秀企業賞が能力開発の分野で果たしてきた役割は少なくありません。日本能率協会からは、今までさまざまな賞が授与されてきましたが、能力開発優秀企業賞はその中でも長く継続されてきた歴史ある賞でした。その賞が、今回名称も含めて一新されることになりました。その背景には、組織を取り巻く能力開発の在り方が大きく変化してきている現実があります。
いうまでもなく、企業・組織には時代・社会の変化に絶えず対応し、変化することが必要不可欠です。能力開発の仕組みや運用もそれに応じたり、あるいはその変化を先取りする形で機能しています。また能力開発の担当者、そしてとりわけ能力開発の仕組みを活用する、一人ひとりの従業員の能力開発への取り組みや実践も、新たなレベルに変化・新化することが要請されているという現実があります。この度の衣替えは、その変化・新化を「開花」と捉え、新たな価値を組織と一人ひとりの個人が生み出し続け、能力開発が進化することを期待してのものです。
能力開発優秀企業賞から能力開花大賞へ
今まで、能力開発優秀企業賞の審査をお手伝いしていて、感じていたことがあります。賞の基準として、戦略、体系システム、効果、風土、そして加点評価のユニークさという視点で能力開発を評価すると、能力開発の体系・仕組みをしっかりと確立・保持している企業が表彰の対象となってきます。そうなると、大企業あるいは大企業の関連組織にとって優位な賞となりがちで、ユニークな展開を加点評価しても、中小企業や急速に成長する個性的でダイナミックな企業は評価されにくいのです。また、効果といっても、長期・安定的な効果が評価されがちとなり、どうしてもビビッドな動きを評価しにくい課題がありました。
風土の評価においても、企業グループ全体、あるいは企業組織全体をカバーする組織風土が評価の対象になり、企業組織の中の特定部門や、活動が長くなりつつある大規模プロジェクトなどの活動を評価しにくいという課題がありました。
それに対して、今は組織内の多様な活動が評価され、多様性、そして一人ひとりの個性が重視される時代です。グループ経営において、多様な職場、組織、グループの活動が重視され、それに見合った能力開発が必要とされる中で、従来型の風土をどのように捉え直すかが、多くの企業にとって課題となってきています。
さらに、対象となる「組織体」の大きな変化があります。現在の企業活動は、ひとつの企業の活動を超えたさまざまな「組織体」との協業から成立しています。企業の日常活動は、組織間の連携、非営利組織に代表される組織の活動、公的組織の活動、組織と組織外の個人が交流し協業するプラットフォームでの連携活動など、さまざまな活動から成立しています。能力開発の仕組みや実践は、その新たな活動の展開から学ぶ時代になってきています。