企業事例② ノバルティス ファーマ 人事・マーケ・営業の三位一体で実践能力のあるMRを育てる
革新的な新薬で人々のいのちと健康に貢献するノバルティス ファーマ。同社では、育成・評価・選抜の仕組みを持ち、体系的にMRを育成している。その一方で、営業所長のOJT を重視し、MR へのコーチングを通じて所長の育成を支えるなど組織的にサポートしている。緻密に構築された同社のMR 育成について紹介する。
MRが見ているのは医師の先にいる患者
製薬会社の営業は、医薬情報担当者(以下、MR)が担当する。MRは、医師をはじめとする医療従事者とコミュニケーションをとりながら自社の医薬品情報を提供し、同時に有害事象(副作用など)の情報を現場で収集する。
信頼関係を土台に営業を行うという点は他の業界と同様だが、MRの場合は、扱う情報が患者の健康や人命にも関わってくる。そのため、まず適正な情報を提供するための高度な知識の習得や医師に信頼してもらえるコミュニケーション能力が求められている。
医薬品の専門的な知識と、営業としての力量の両方が求められるのだ。
MRも営業である以上、数字を追求するのは当然だが、ノバルティスファーマでは「私達が考えている営業とは、売り込もうという営業ではありません」(夏山氏)と明言する。「MRの先にいる医師、そしてその先にいる患者さんが何を考え、悩んでいるのか。その気持ちを把握することが、営業の要諦だと考えています」(夏山氏)。
バリュー&ビヘイビア』と『 プロフェッショナル・コンピテン シー』 をベースにMR力を育む
MRを育成するうえで、ノバルティス ファーマが大切にしていることはバリュー&ビヘイビア(V&B)とプロフェッショナル・コンピテンシーである。
まず、V&Bは同社が全社員に求めている企業価値に基づく行動規範で、イノベーション、リーダーシップ、倫理性・相互尊重など10項目で構成されている。このV&Bを正しく理解し実践できるようにするために、ワークショップや評価会議などを行っている。
さらに、MRにはプロフェッショナル・コンピテンシーとして「戦略実行力、営業力、主体性・組織貢献力」の3つの力が求められる。
3つのプロフェッショナル・コンピテンシーは、新卒レベルからマネジャーレベルまで細かく規定されている。それぞれの階層ごとに研修を行ったり、MRに関連する教育体系の全体を構築するのが、夏山氏と小林氏だ。
それに対して、V&Bの研修など全社共通の教育は人事部門が行っている。
営業部門と人事部門がそれぞれ教育を行っていくわけだが、その際には、教育内容の重複や齟齬がないか、より効果的な連携の仕方はないか、すり合わせをするという。また開発や管理部門など部署間の横串を通していくのも人事の役割だ。
このように、ノバルティス ファーマでは人事と他部署が連携しながら、同社の人材として基本要件を満たしたプロフェッショナルMRを育成していく体制がとられている。
それでは次に実際に、同社がどのようにMRを育成しているのかを見ていこう。