ID designer Yoshikoが行く 第90回 理系で盛り上がった年の瀬に見直したい育成の本質
気がつけば、はや12月号の原稿を書く季節。25 年目の「東西ドイツ統一記念日」に沸くベルリンで、壁の崩壊を目の前で見てから現在までの四半世紀に思いを馳せながら、日ごとに深まる秋の風情にやや感傷的な気分に浸っていたところに、嬉しいニュースが飛び込んできた。青色発光ダイオードの開発と実用化で3人の日本人科学者(国籍でいうと2人の日本人と1人の米国人だが)がノーベル物理学賞を受賞したという快挙である。
オープンしたばかりの巨大ショッピングモール「モール・オブ・ベルリン」のカフェに座り、スマホでニュースをチェックすると、「好きなことをやる、人のやらないことをやる、とことんやる。この3つが大事です」と科学者の心構えをきっぱりと説く赤﨑勇名城大学教授。「やりたいことをやってきただけです」とはにかむ笑顔がキュートな天野浩名古屋大学教授。そして「研究の原動力は怒りだ」とアグレッシブに語る中村修二カリフォルニア大学教授と、同じ研究に携わる科学者でも、その哲学は三者三様で面白い。
振り返ってみると、2014年は理系に関するニュースが次々と世間の注目を集めた1年だった。
まず1月。年初めに神戸から発信されたのがSTAP細胞と「リケジョ」(理系女子)の話題。この研究の真偽はともかく、典型的な文系女子でさえ、「夢の若返りが実現するかも」というコメントにワクワクした。
そして5月。ワシントンで開かれたASTD(ATD)カンファレンスでも、一番の注目テーマは「脳科学」。人材育成の専門家にも理系の知識が求められる時代なのね、と焦る参加者も多く、「大脳、神経、ホルモン」などの単語を交えたセミナーが過剰なほどの盛り上がりを見せた。