おわりに 何のためにビジネスを行っているのか── 「商才を考える」
「商才」と「商人道」
武士に武士道があるように、商人にも江戸時代の昔から商人としての「道」を追求する人びとがいた。実は日本には商売の才能を発揮するだけでなく、高い倫理観を持つ豪商が数々存在したのである。彼らは顧客満足を大切にしつつ、社会貢献を忘れなかった。また、質素倹約を旨としながら、時には世間をあっと言わせるビジネスモデルで富を生み出した。
元禄、享保時代を生きた思想家、石田梅岩はこんな言葉を残している。「富の主は天下の人びとなり」。顧客主義や、利益を生み出すことの大切さ、公共の精神、身分で人を差別しない平等の感覚など、さまざまな哲学が汲み取れるフレーズだ。
日本の企業、財閥は明治以降も彼らの精神を受け継ぎ、事業を発展させてきた。その影響は現代の社訓や社是にも色濃く反映されている。そこで本特集では、優れた商人が身につけていた「商才」を日本のビジネスパーソンの基本能力、基本姿勢として改めて考えていきたい。
商売の目的を考える
「学校頭」のビジネスパーソンが増えている、と指摘するのはOPINION1の秋山進氏(プリンシプル・コンサルティング・グループ代表取締役26 ページ)だ。商売の世界には正解などない。自力で答を見つけ出すしかないが、真面目で素直な学生タイプにはそれが難しい。
秋山氏によれば、日本の会社員は4タイプに集約されがちという。(1)「数字に細かく、石橋を叩いて渡るタイプ」(2)「慎重かつ抜け目なく、転んでもただでは起きないタイプ」(3)「大胆、奇抜なアイデア、行動で人をひきつけるタイプ」(4)「時代や社会の変化に対応し、大胆にイノベーションを起こすタイプ」。