CASE.2 セブン&アイ・ホールディングス ビジネスでベストの判断を下す能力 「顧客の立場」を考え抜け ―セブン-イレブン・ジャパンの商才教育
入りたての高校生アルバイトも絶妙な発注センスを発揮し、売り上げに貢献するというセブン- イレブン・ジャパン。
その独自の人材育成システムは、鈴木敏文代表取締役会長・CEOの「顧客の立場に立ち続ける」という独自の商人哲学から生まれた。
同社の取材を数多く重ねてきたジャーナリスト・勝見明氏に、その育成の本質を聞いた。
● 商才教育全国全店舗で実施
商才は誰でも磨くことができる。高校生のアルバイトといえど例外ではない。端的にそれを物語るのがセブン-イレブン・ジャパン1店舗当たりの平均日販(1日の売上高)だ。
2014年2月期は66万4000円。他のチェーンを12 ~ 20万円上回る。理由はいくつかあるだろうが、他社との最大の違いは、ずばり“店員”だろう。オーナーや店長だけでなく、パート・アルバイトのスタッフも商才を発揮し、「全員参加経営」を行っている。
あらためて、商才とは何かと問われれば、私は「ビジネスのその時の状況に応じてベストの判断を下す能力」と答える。そして同社では、全国全店舗の現場で、商才教育が行われている。
店員たちの仕事は、単に店舗清掃やレジ操作などをマニュアル通り励行することではない。「単品管理」という同社独自の手法を日々実践している。
単品管理とは、商品1品ごとの売れ筋の仮説を立てて発注し、結果をデータで検証しながら次の発注の精度を高める方法のこと。1店舗当たり平均2800種類もの商品を置いているため、当然店長ひとりではまかないきれない。だから、パート・アルバイトを含め、全員が発注業務を担当することとなる。
もちろん、入りたてほやほやの新人にとっては簡単な仕事ではないだろう。機械的に前日と同じ商品を同じ数だけ発注したりする。ところが、それではうまくいかない。売れ行き動向は日々変わるからだ。
全員がPOSシステムの販売データをチェックすることになっているため、結果は一目瞭然。売れていれば自分の判断は正しかったとわかるし、売れていなければ間違いだったと気づく。売れ残れば廃棄ロスが出る──となれば、自然と誰もが真剣に取り組むようになる。
例えば、「この商品は行ける」と思ったら多めに仕入れ、目立つように陳列する。ポップを書く。自分の発注した商品を売り切る努力をするようになるのだ。
お客の動きを観察するうちに、次第に洞察力や仮説力も高まる。「日中は高齢者、夕方以降は女子高生、OLが多い。ということは、昼間は和菓子、夜はデザートが売れるかもしれない」「2月というのに明日はずいぶん暑そうだ。もしかしたら冷やし中華が売れるのでは」などだ。
あるいは、普段なら何気なく見過ごす、近所の工事現場の看板にピンときたりする。工程表に合わせてタイミングよく弁当類を仕入れれば、お腹をすかせた現場作業員たちに喜ばれるだろう。