巻頭インタビュー 私の人材教育論 自立した個を尊重する組織と人事のあり方
データベースで世界シェアナンバーワンを誇るオラクルは、クラウドでも世界一をめざす戦略を打ち出している。
新しい戦略の実現には、どのような人材が求められるのか。
また、その育成方法とは。
2014年4月に日本法人のトップに就任した杉原博茂氏に方針を聞いた。
最も愛され憧れられる会社
──2014年4月に社長に就任されましたが、今、描いている事業戦略を教えてください。
杉原
日本オラクルは、来年の10月で設立30年を迎えます。IT 業界の中では歴史が長く、東証に上場している唯一の外資系IT企業で、データベース(DB)のビジネスでは、世界および日本でシェアナンバーワンを誇っています。またDB技術をコアに、ITを使い事業の基盤を構築するうえで必要となる技術を全て持っているのが当社の強みです。そうした強みを活かしながら、今後当社がめざすのが、「クラウドでもナンバーワンになる」ということです。
コンピュータの歴史は、メインフレームからパソコン、インターネットへと変わってきました。しかしこれからはエアコン、TV、冷蔵庫、家の鍵など、さまざまなものがインターネットでつながり、そこから派生する全てのデータの塊、つまり「ビッグデータ」をマネジメントし、使いこなすことが主流になる時代です。それを実現するのがクラウドですが、当社はこの分野でも2020年までにナンバーワンになることをめざしているのです。
当社のもう1つのビジョンは、「2020年までに最もAdmireされる(愛される・憧れられる)会社になる」ことです。
単に技術力に優れ、マーケットシェアが大きいだけでなく、入社したことをうらやましがられるような組織にしたい。新しいものをどんどん開発するのですが、それを楽しそうにやっている会社だと周囲から評価されるようにしたいと考えています。
この2つの目標を「ビジョン2020」として掲げ、その実現に向け、最初の3年で組織、体制、従業員の考え方を変革し、足場固めをしたうえで、次の3年で具現化していく方針です。
『坂の上の雲』と『島耕作』
── そのビジョンの実現には、どんな人材が必要になりますか。
杉原
私は、“明治時代の日本人”、ちょうど司馬遼太郎の『坂の上の雲』に出てくるような人が必要だと思っています。当時は太平の世が終わり、欧米列強の脅威にさらされる不安はあるものの、身分制度が廃止され自由の身になった人々が大きな夢を持ち、新たな時代を切り拓いていきました。秋山好古、秋山真之兄弟や、正岡子規のような人たちです。
もう1つ、私が考える理想的な社員のイメージは、『島耕作』です。高度成長期にグローバルなビジネスで戦いながら、課長から部長、取締役、さらに社長へと上りつめていく1人の男性の成長を描いたこのマンガに共感した人も多いでしょう。
これらに共通するのは、組織に依存せずに自分の足で立ち、卑屈にも高慢にもならず、周囲と協力してグローバルな舞台で戦いながら、ビジョンの実現に向けて頑張る姿です。
こうした生き方は特別なものではなく、日本を形づくってきた先輩たちが皆やってきたことです。ですから現代に生きる我々も── 使うのはITというアメリカ生まれの道具ですが──先輩たち同様、グローバルに戦ってビジョンを実現していかなければならないのです。
育成の基本は“個の尊重”