連載 グローバルビジネスに役立つ教養の本棚 第4回 歴史を学ぶ① 「構え」 物語と事実を分けて捉える
司馬遼太郎、藤沢周平、塩野七生らの小説を愛読するビジネスパーソンは多い。だが、その行為を「歴史好き」といえるかどうかは意見が分かれる。なぜなら、歴史「小説」と、「史実」は異なるものだからだ。
歴史に親しむ前に知りたい「構え」
いうまでもなく、ビジネスパーソンが歴史を学ぶことはとても有益です。歴史を学ぶ意義は一つに集約できるものではなく、いくつか存在しますので、複数回に分けて解説していきます。
歴史と一口にいっても、世界史・日本史から、ビジネスの歴史、個々の会社の社史まで幅は広くあります。今回は、教養という言葉に寄せて、世界史や日本史といった大きなレベルの歴史を対象として、そうした歴史に親しむ際に重要となる基本的な「構え」を紹介します。
それは、世の中に「歴史もの」として流通している物語やエピソードと、「歴史的事実」とを分けて考えるということです。「司馬遼太郎の作品が好き」ということだけでは、「教養としての歴史を身につけている」とはいえないのです。「坂本龍馬に学ぶ、時代を変えるリーダーシップ」というのは「めざすモデル(理想像)を掲げた学習」として有効であることは否定しません。しかし、それは「作家が事後的に創造した坂本龍馬像に過ぎない」ことを意識しておく必要があります。
歴史に限らず、「創られた物語」と「事実」とを分けて考えることは、ビジネスパーソンに求められる基本的な態度のひとつです。しかし、こと歴史という領域になると、この区別が難しくなる傾向があるようです。