第14回 オープン過ぎる建物が助け合いを生む!? 現代美術館のキュレーターたちの学び 金沢21世紀美術館 不動美里氏 金沢21世紀美術館 学芸課長|中原 淳氏 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
北陸の古都、金沢に国内外から年間150万人が訪れる現代美術館があります。2004年の開館から7年を経てなお、多くの人を魅了し続ける金沢21世紀美術館。互いに助け合いながら、現代美術の新たな可能性を模索する熱きキュレーターたちの現場を訪ねました。
街に開かれた美術館
金沢の中心部、名園として知られる兼六園のすぐ隣にある金沢21世紀美術館。訪れてまず驚くのはその特徴的な建物です。全面をガラスで囲まれた丸い平屋の建物。通りと美術館の間を隔てるものは何もなく、建物の入口は四方にあり、どこからでも入れる構造です。この開放的な建物は「まちに開かれた公園のような美術館」をコンセプトに、世界的に著名な建築家、妹島和世+西沢立衛/SANAAによって設計されたもの。
建物内には自然光が差し込み、明るく広々とした空間が広がっています。交流ゾーン(無料)と展覧会ゾーン(有料)に分かれており、交流ゾーン内でも美術館のコレクションをはじめ多くの作品を見ることができます。
開館時間も交流ゾーンは、9:00~22:00。年末年始以外は休館なしと、ほぼ「いつも開いている」状態。市民が公園のように、ふらっと気軽に立ち寄ることができる場となっています。訪れた日も、雪の降る2月の平日でしたが、多くの来館者で賑わっていました。
来館者は国内外からの観光客はもちろんのこと、大人から子どもまで多種多様。子どもへの教育活動にも力を入れており、館内にはアートライブラリーや託児室、キッズスタジオも完備。市内の全小学校の4年生を対象にミュージアム・クルーズも行われています。
作家とともに創る現代美術の展覧会
金沢21世紀美術館が開館から7年を経て、今もなお、衰えない人気を誇る理由は、次々と開かれる展覧会が、多くのリピーターを呼び込んでいるところにあります。
訪れた日も、美術館所蔵作品の一部を企画展示するコレクション展の他、国内外の作家の企画展など、大小5つの展覧会を同時開催していました。これらは全て美術館の学芸員(キュレーター)による企画で、その内容はどれも斬新なものばかり。
音と映像の作品、壁一面を美しく染めた薄布で覆い尽くしたインスタレーション(空間全体を作品として表現する手法)、金沢の若者たちが海外から招いた作家と共に1年がかりで創作活動に取り組むプロジェクト、2万匹の蚕を網の上で歩かせ作った巨大なシルクの作品など。