TOPIC 『 「ソーシャルラーニング」入門』出版記念 「 ソーシャルラーニング元年! 学びで加速するソーシャル世界」セミナーレポート ソーシャル×ITからの「 学び」への最終回答
去る2012年1月30日、『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP社/刊)出版記念セミナーが開催された。本書の翻訳を担当したキャスタリアの松村太郎氏、山脇智志氏に加え、ビジネスや教育などの各領域でソーシャルメディアを活用した学びに関する研究・実践を日々行っている専門家たちが一堂に会するまたとない機会となった。ソーシャルラーニングとは何か、そしてその学びの可能性とは何か。開催内容の一部を紹介する。
リアルタイムで参加し学び合うセミナー
「本日のハッシュタグ#slearnjp」――会場前方のホワイトボードにこう大きく掲示され、本セミナーは開始された。ハッシュタグは、Twitterでの投稿につけ加えることで、複数の投稿者による同じテーマのつぶやきを収集しやすくするもの。『「ソーシャルラーニング」入門』では、ハッシュタグを用いれば、講演などへのリアルタイムの参加や評価が可能になるとしている。
まさに本セミナーは、人々が得た知識を共有することで学びが深まるソーシャルラーニングを体感できる場でもあった。最初にキャスタリアの松村太郎氏、山脇智志氏(P42参照)がそれぞれ登壇したのち、データセクション会長の橋本大也氏が、多様な学び合いを可能にする話題のサイトを紹介し、ソーシャルラーニングの可能性を示した。デジタルハリウッド大学院 特任教授の佐藤昌宏氏は、学習後に行動変容を起こすソーシャルラーニングの仕組みについて紹介(P43参照)。ここでは松村氏の講演とパネルディスカッションについて報告する。
【講演1】ソーシャルラーニングとは? その背景を探る
松村太郎氏
『「ソーシャルラーニング」入門』監訳者/キャスタリア チーフアカデミア/ジャーナリスト
本書の監訳者であり、キャスタリアのチーフアカデミアである松村太郎氏は現在、米国バークレー在住である。そのため本セミナーにはスカイプで参加した。松村氏は自身の移住体験を踏まえ、ソーシャルメディアを通じたコミュニケーションについて次のように話した。「移住して実感したのは、海外に行っても普段のコミュニケーションは何も変わらないということでした。日本と米国は6000キロ以上も離れていて時差もありますが、iPhone(スマートフォン)があれば電話もTwitterもFacebookも日本と同じように使えます。それほどまでに、ソーシャルメディアは我々の生活に深く浸透しているのです」(松村氏)
最近の調査では、米国のソーシャルメディアユーザーはFacebookだけで1日につき6億分も費やしていることが明らかになっているという。「この6億分以上という時間のうち、一部でも“学び”に変わったらどうでしょう。今後の我々の生活や、これから学んでいく人たちにとって、大きな希望になるのではないでしょうか」
学びをシェアする
今回出版された『「ソーシャルラーニング」入門』の原題は、“TheNew Social Learning”。「社会的な学び」とは、私たちが幼少時代から親や周囲の大人のさまざまなことを見よう見まねで覚えた経験を指すと松村氏。そして、その経験からさらにジャンプアップし、次の段階に行こうというのが、本書が論じる“新しいソーシャルな学び(The NewSocial Learning)”というものだ。「今までの“学び”は、学校を通してのフォーマルな学びが中心でした。しかし今やそれが変わりつつある。GoogleやWikipediaから、自分がほしい時に、自分のほしい知識をまず把握するという形が出来上がってきています。こうした学びはフォーマルな学びと違って単位にもなりません。ただし、そこで知識を得たということをFacebookなりTwitterで発言すれば、他の人にそのことが伝わります。あるいは、Web上でその発言や記事のURLを見た人が、同じリンクをたどって参照すれば、その人にも学びが伝わるでしょう。知識をシェアすることで、学びが次々と伝わっていく――これが、ソーシャルラーニングの最も基本的な流れなのではないでしょうか」