特集 今、教育に何が起きているのか ソーシャル・モバイルラーニング
Facebook、TwitterなどのSNS、そしてスマートフォンやタブレットの端末と、さまざまなツールの隆盛が、企業内教育にも影響を及ぼしつつある。こうした状況が押し寄せている現在、大人の学びにも、当然変化が起きている。この新しい動きとは、具体的にはどういったものなのか。さらに、教育担当者は何を押さえておくべきなのだろうか。
新しいメディアを介した学びを人材育成に活かすには編集部
ソーシャル・モバイルと大人の学び
スマートフォン利用者が増えている。MM総研(IT関連マーケティング会社)の予測によれば、スマートフォンの出荷台数は今後も拡大傾向にある。2012年度、スマートフォンは携帯電話全体の総出荷の60.1%を占め、過半数を超えるという。
スマートフォン利用者数とともに増加しているのは、SNS利用者である。「モバイル端末と、ソーシャルメディアは抜群に相性がいい」(P30 Opinion小松秀圀氏)ため、モバイル端末から、いつでもどこでもソーシャルメディアをチェックする人が増えているのである。
ソーシャルメディアの中でも、特に世間をにぎわせているのは、「Facebook」である。世界で8億4500万人*1、日本でも500万人*2の月間アクティブユーザー(月に1回以上利用したユーザー)がいると発表している。こうした変化は、どういう影響を社会に及ぼしているのか。また、働く大人の学びに変化はあるのだろうか。
ソーシャルラーニングとは
結論からいえば、社会に大きなインパクトを及ぼす変化が今、起きている。そして、大人の学びもその変化の中にある。
1990年代から、社内SNSを導入する企業や、他のグループウェアやメーリングリストなどで情報共有を行う企業や組織はあった。そうしたことと、ソーシャルメディアを活用した「ソーシャルラーニング」は何が異なるのか。
今回のOpinionの一人、山内祐平氏(東京大学大学院 情報学環 准教授)は、その違いを「開放性」と表現する。
TwitterでもFacebookでも、ソーシャルメディアにはさまざまな背景を持つ人が参加している。利用者がその気になれば、著名人や知識人やその他のハイパフォーマーが、日々何をどう考え、情報をどう手に入れているかを簡単に知ることができる。
また、知りたいことをSNS上に書き込めば、その発言を見た知り合いや、親切な誰かが知恵を分けてくれる。山内氏の記事でも、海外留学を希望する高校生が、それまで直接知り合いではなかった、ある留学経験者から助言を受ける例が出てくる。そのように、自組織内や、その人の交友範囲を超えて、外部から学べる環境ができたということである。
つまり「ソーシャルラーニング」とは、「ソーシャルメディアを使って広く社会から学ぶ」ということだが、これは「Web上でのインフォーマル・ラーニング」である。「系統立てて用意されたコンテンツを、教師を通じて教えてもらうのではなく、雑談のような対話や情報の発信・受信を通して自然に学ぶ」*(3 コネクト沖津氏)ということであり、継続的で持続的な学習の可能性を秘めている。
ちなみに、これらのメディアの発展・普及によって、「eラーニング」の概念も変わる。
これからのeラーニングは、「あるコースを修了する」というものではなくなる。学習者がWebを介して、他の学習者とコミュニケーションをとりながら学習することをも含むものになるのである。