Opinion Column 1 人を動かす「人間力」は“習慣”で高められる!
なかなか捉えることが難しい「人間力」を、独自の視点から分析しその高め方までを提案しているのがイコアインキュベーションだ。代表の紺野真理氏は、海上自衛隊での勤務経験などから、「人間力」を持つ人の要素を8つに整理。さらに、どんな人でも「習慣」で、人間力を高めていけると説く。その心は。
「○○さんがいうのなら」
私の考える「人間力」は、人が人として人を動かす感化力のこと。これは“合理的な理解や納得を超えたところで人を動かす影響力”と定義している。
その意味を実感していただくために、上司から困難を伴う業務を持ちかけられたと想像してみてほしい。そんな時、その業務を引き受けることで大変な苦労があるとわかっていても、「○○さんからの依頼なら喜んで引き受けよう」という気持ちにさせる人の顔が、何人か思い浮かぶのではないだろうか。感化力のある人、すなわち人間力のある人とは、そんな人のことを指す。
私の場合は、海上自衛隊に勤務していた際の、最初の配置の時の艦長K氏が思い浮かぶ。私がどう部下と接するべきか困っていると、「人は誰だかわからない奴についていかないんだよ。飲みに行ったっていいし、油だらけになって現場で一緒に仕事したっていい。部下のいいところを『お前すごいな』とほめてもいいし、ダメなことをした時には、胸倉をつかんで叱ったりすればいい。そういうことじゃないのか」といわれ、目が覚めた思いがした。
しかし、人間力が求められるのは、管理職やリーダーだけではない。なぜなら人は皆、一人で仕事をしているわけではないからだ。新人社員であろうとも同様。たとえば仕事の進め方に対する疑問を先輩に投げかけた時、「なんて生意気なことを……」といわれる新人と、「君がそういうならちょっと考えよう」といわれる新人。どちらに人間力があるかはいうまでもない。
私は研修を通じて、企業が抱えるさまざまな悩みを耳にする。その中で、「上司と部下の関係がうまくいかない」「プロジェクトのメンバーが思うように動いてくれない」といったケースはもちろんのこと“、人間力”が関係しているトラブルは思いのほか多い。
たとえば工場などで起こるケガや事故も、人間力の希薄さに起因している場合がある。なぜなら「これをやりなさい」と指示された時、それが人間力のある人からの指示なら即座に従うのに、そうでない人からいわれると「え? なぜ?」「どうして今?」などと躊躇する。そのほんの数秒の躊躇が、事故やケガを招いてしまうことがある。オフィスワークでは、数秒の躊躇によって業務の成果が大きく左右されることはあまりないだろうが、人間力の欠如はビジネスにも確実に悪影響を及ぼす。