巻頭インタビュー 私の人材教育論 万国共通に貢献度を高めるのは「エンゲージメント」
航空機エンジン、発電用タービン、医療機器の製造から金融まで、さまざまな事業を展開するGE。世界的なグローバル企業であると同時に、人材輩出企業としても知られる。その人材育成の仕組みと背景にある哲学を、GEキャピタル社長兼CEOの安渕聖司氏に伺った。
リーダーシップの要とは
──GEキャピタルの事業について教えてください。
安渕
GEキャピタルは、米GEの金融部門で、日本では、「設備・資産のリース&ファイナンス」「自動車リース・車両管理」「販売代理店(ディーラー)向け小口リース・クレジット」の3つを中核事業とし、全国の30を超える拠点を通じて提供しています。発明家エジソンが設立した親会社同様、イノベーションを大切にする文化があり、金融サービスに加え、製造業GEの一員であることを活かした、金融を超えたパートナーシップサービスも提供しています。これは、GEが130年を超える歴史の中で蓄積してきた人材育成やプロセス改善といった企業経営のノウハウをお客様に無償で提供するものです。
──そうした事業を展開するうえで必要となる人材とは。
安渕
社員の行動基準である「グロースバリュー(Growth Values)」を高めていける人材を求めています。
グロースバリューとは、これまでビジネスを成長させてきたリーダーに共通する要素で、GEの価値基準となるものです。時代と共に変化してきましたが、現在は右上の5つの要素が該当します。
さらに、近年は、難しいことをシンプルにして、スピード感を持って取り組むことも求められています。
──グロースバリューは業績と共に人事評価の基準となっているとのこと。そこまで重視する理由とは。
安渕
グロースバリューがリーダーシップの要となるものだからです。
当社では、リーダーシップはポジションではなく、全社員に求められるものです。自分だけではできないことを、周りを巻き込みながら達成していく。その時に必要なのがリーダーシップであり、その中心にあるのがグロースバリューです。
グロースバリューを持たなければ、リーダーシップも持てない。成果を上げるために不可欠な要素なのです。
── GEでは人事部門の果たす役割が大きく、事業部門にも人事があるとのこと。その役割、位置づけとは。
安渕
当社では年に2回、「セッションC」という、組織と人事の棚卸しがあります。これは、各組織の人材を評価し、後継者計画をつくるもので、組織の人間を「9ブロック」※に当てはめ、誰がどのポジションにいて、誰を上のレベルのトレーニングに行かせるかといったことを決める会議です。そして、これをリードするのが、人事とビジネスリーダーです。
ビジネスの目標を達成するために一番大切な経営資源が人材であり、その人材を、エネルギーや時間をかけて採用・育成・評価したり、元気づけたり異動させたりすることは、根本的な経営活動です。つまりGEでは、人事部門は戦略部門であって、間接部門ではありません。したがって、業績が悪くなるなど、会社の危機の時こそ必要になる部門なのです。