めざせ☆経営型人事 書籍に学ぶビジネストレンド 第20回 気がつけば定番スキル その2「調べる力」編
ビジネスのトレンドを知っておくことは、経営や人材を考えるビジネスパーソンにとって必須である。本連載では、データバンクに勤め、1日1冊の読書を20年以上続けてきた、情報のプロが最新のビジネストレンドと、それを自分のものにするためのお薦めの書籍を紹介する。
前号からビジネスパーソンの定番スキルを取り上げているが、2回目のテーマは「調べる力」。ビジネスの成否を左右するといっても過言ではない、かなり重要なスキルである。
誰しも役員や上司から、「次の会議までに○○について調べておいてほしい」と依頼される、あるいは部下に対し、「○○について調べてまとめておくように」と指示することがあるだろう。そこでよい成果が出せるかどうかは、まさに「調べる力」にかかっている。
このスキルほど、個々人のセンスに委ねられているものはないかもしれない。体系的に学ぶ機会もないのに、何となくできるできないの優劣がついてしまう。それなのに新人研修や中堅社員研修で調査能力を鍛える研修を継続的に実施している、という話はほとんど聞かない。
優秀な企業参謀や秘書は、例外なくトップマネジメントの期待を超える、さまざまな情報を効率的に調べる力を有している。しかも先回りして調べることが得意なのである。おそらく文献やWebサイトでも有益なものをよく知っているのだろう。これからはよい情報をキャッチしている人が圧倒的に強い時代だ。
文献調査能力やWebから必要な情報を探す能力など、調べる力の裾野は広く、決して簡単に身につけられるものではない。よって私自身、各企業に赴き、特にビジネスシーンにおける「調べる力」について講義を行うことがよくある。担当責任者の方から、「若い社員に調べる力の重要性をレクチャーして刺激を与えてほしい」と熱く依頼される。だが、いざ蓋を開ければ一番熱心に聴いているのは若手社員ではなく、当の担当責任者やマネジャークラスの方であったりする。こうした講義を聴く機会がおそらくなかったのだろう。「調べる力」は、早くから鍛えるべきなのである。
では、「調べる力」に関する書籍トレンドを見ていこう。このテーマ、ビジネス書もさぞ多いと思いきや意外にそうでもなく、少し網を広げて見る必要がある。
① 有識者の王道的情報収集手法文献
② 有識者の知的生産関連文献
③ 優秀な投資家による思考術文献
①については、上野佳恵氏『情報調査力のプロフェッショナル』(ダイヤモンド社/2009年)がオススメ、②については梅棹忠夫氏『知的生産の技術』(岩波書店/1969年)が王道中の王道である。③がやや異質であろうか。時代の先読みを常に意識している投資家の知見は、調べる力向上に明らかに通じる。菅下清廣氏の一連の著書に注目しておきたい。