第20回 大学でも現場でも学べない臨床スキルと知識を学ぶ 現役歯科医が集う歯医者さんの勉強会 藤本研修会 藤本順平氏 藤本研修会 講師|中原 淳氏 東京大学 大学総合教育研究センター 准教授
誰にとっても身近な存在である歯医者さん。藤本研修会では、現役の歯医者さんたちが、冠を被せた
り、義歯を入れるなどの補綴治療や、歯周病、インプラントなどの歯科治療について学んでいます。
日々患者の治療に当たっている歯科医師たちが、職場の外で学ぶ理由とは?
「歯医者さんが学ぶ勉強会がある」と聞いて訪れたのは、横浜にある藤本研修会の研修室。土曜日の午前中、診療台を始め各種技工設備を備えた教室では、20名ほどの受講者が、熱心に「補ほてつ綴・咬こうごう合コース」の講義を受けていました。この日のテーマは「クラウンブリッジ治療の精度を求めて」。クラウンブリッジ治療とは、虫歯などで歯が大きく欠けた部分に、金属やセラミックなどのクラウン(冠)やブリッジ(冠橋義歯)などを被せる治療のこと。講師は藤本順じゅんへい平先生。歯科補綴(欠けた歯に冠を被せたり、義歯を入れるなど、人工物で補う)治療の世界的権威です。クラウン(冠を被せる)治療を行う場合、欠けた歯の型を取り、それをもとに歯科技工士がつくった歯冠を被せるわけですが、その際、できる限り精巧な歯冠をつくり、隙間なくはめ込むことで、細菌が入りこむリスクを減らすことができます。今日はこのクラウン治療の精度を極限まで高めるための方法について、講義と実習が行われました。藤本研修会では、藤本順平先生による1年間の「補綴・咬合コース」パート1~2の他、6カ月の「LOT(部分矯正)コース」、「歯内療法コース」、「ペリオ(歯周病)・インプラントコース」の各コースがあり、全国から100 名以上の歯科医師が集まり、月1度の研修に参加しています。受講者は日々、患者に接し、治療を行っている20 ~ 30 代の歯科医院などに勤務する歯科医師たち。歯科医師たちは、なぜこの場で改めて歯科治療について学ぶのでしょうか。
研修会を立ち上げた理由
藤本先生が歯科医のための研修会を始めたのは1979 年のこと。自身が日本と米国の大学で学ぶ中で、日本の歯科教育に対して抱いたある思いがきっかけでした。