Opinion 3 生涯キャリアの視点から 企業人としての円熟を 組織運営と若手育成の糧に
改正高年齢者雇用安定法の施行による雇用延長推進は、高年齢者を本当に幸せにするのか。
そして、企業は彼らの力を十分に活用できるのか。
技能も意欲もばらつきがある世代を活かし、企業競争力の源泉とするために、
生涯キャリア発達の視点から渡辺三枝子氏が、個人と組織のありたい姿を示唆する。
雇用延長で成功する人の共通点
年金支給開始の問題と絡んで、定年退職年齢の引き上げ対策はこれまで幾度となく繰り返されてきた。一見、高年齢者に優しい制度のようだが、個々が将来を考える機会を奪いかねない危険もはらんでいると思う。定年がある限り、その後の人生を自ら考え、決断していく必要性は以前からいわれてきたし、65歳に延長されたとしても状況は同じだ。しかし延長された年月を、企業人としての役割を認識し積極的に取り組むのなら、定年後に続く人生も充実させることができるし、企業にとってもプラスとなるだろう。
ではどうすればそれは可能か。そのヒントを探る時、以前参加したある研究が思い浮かぶ。50 ~55歳で出向となった人々を対象に、出向を通して新たな職業人生活を成功させた人々の、成功要因を探し出したのだ。たとえば大手から子会社への配転を告げられた50 代の男性は、かつて地方に工場長として勤務した際に、零細企業の経営者と付き合った経験が、出向先子会社への適応に役立ったという。彼らのように過去を振り返り、経験をもう一度捉え直して新しい価値を見出し、これからの人生に活かす姿勢こそ、生涯キャリアの形成に欠かせない。