ウェイ設計の新たなアプローチ 急がば回れ! 施策展開より コンセプト設計にこだわる
経営理念やウェイの構築・浸透は、ビジネスリーダーたちを悩ませる古典的な命題である。
本稿では、そのコンセプト自体を魅力あるものにすることの重要性を説くとともに、
コンセプトを検討する際に重要な視点について提案したい。
企業として大切にしてきたもの――いわば「内省する」ことももちろん重要だが、
日本企業においては、「外」――外部環境をあえて意識することがより重要である。
ウェイのコンセプト自体を魅力あるものに
今回取り上げるのは、企業のウェイ――社会的な存在意義、中長期的なありたい姿、普遍的な価値観として提示されている内容を再考する方法である。
外資系企業ではMission、Vision、Values、日系企業では経営理念・社是・社訓・行動規範、価値観、○○ウェイなどと呼び名はさまざまであるが、読者が勤務されている企業でも何かしら自社の価値観を表現したものが存在し、日常的に目にする機会は多いはずだ。ある意味、こうした経営理念やウェイの構築・浸透は、チェンジマネジメントのコンサルティングとして非常に古典的でありながら、今日的にも企業経営者をはじめとするビジネスリーダーたちを悩ませ続ける難解なテーマともいえる。
最近のコンサルティング現場での声を拾うと、加速するグローバル事業展開やM&A、新規事業参入といったさまざまなビジネス面の事象が、自社の経営理念やウェイを再考する直接的なトリガー(引き金)になっていることが多い。老舗、新興企業問わず、これからの中長期的なビジネス展開にフィットした新しいコンセプト提示、または新規ではないにせよ、既存の定義・文言の拡大解釈や加筆修正、多言語翻訳による拡大展開といった活動が進んでいる。
他方で組織・人事側面の事象でみると、行き過ぎた成果主義人事の反省から、理念回帰やあるべき行動規範重視の目標設定、人事評価・処遇へと振り子を戻す模索も始まっている。
残念ながら、実態としては一過性の社内ブーム(プロジェクトチームが発足・推進している時だけのお祭りイベント)で風化してしまっていたり、さまざまな施策を打ち出したものの、残った成果は“お題目”としてのスローガン、ポスター、あるいは人事評価ウエイト配分の微修正といった、当初の期待とは程遠い出来上がりになっている、といったことも散見される。
理念やウェイといった抽象的な概念を企画し、コントロールする作業自体が元来、難しい。それゆえ、どうしても実態の活動を伴う施策展開の議論になるが、まずは元になるコンセプト自体が十分に練られておらず、洗練されていない状態のままでは浸透展開に移行しても早期に限界が訪れる。実はここが重要で、まずはそのコンセプト自体が魅力に乏しい、社員が興味を持てそうにないという状態を脱却することが大切だ。
内部と外部、両方に目を向ける
そこで原点に立ち返って、コンセプト設計はどのようにして進めるべきかをまず整理したい。もちろんいうまでもなく、理念・ウェイ等の設計・浸透方法に絶対解は存在しない。よって、あくまで参考例と考えてほしいが、筆者個人は経営戦略のベーシックなアプローチと相似形と考えており、それをシンプルに整理すると次の「内」と「外」という、大きく2つの概念に分かれる。
■企業の『外』にフォーカス-ポジショニング・アプローチ【提唱者】マイケル・ポーター(ハーバード大学ビジネススクール教授)
企業の競争優位は、市場の構造と自社のポジショニングによって決まるというもの。要は、『事業を成功させたいなら、勝てる環境を見つけて、そこでビジネスをすべき(よって外向き視点を重視)』という考え方。