ID designer Yoshikoが行く 危機を乗り越える 「デジタル社交力」
「感情」を読み取る力がカギ
大変な事態である。大震災、大津波、原発事故。未曽有の災害の連鎖と、その後の悲惨な状況に、足もすくむ思いだが、ありがたいのがソーシャルネットワークを活用したコミュニケーションの力だ。facebookやtwitterによる素早い励ましや貴重な情報、心が熱くなるエピソードの「拡散」は、くじけそうな心を奮い立たせてくれる。「ひとりじゃない」という想いが、人々を絶望から救い上げる力になる。
たとえば震災直後にYouTubeで公開された「クロアチアの反政府デモ隊の日本大使館前の黙祷」の映像。シュプレヒコールを繰り返す5000人規模のデモ隊が、日本大使館前では一斉に静まり返り、ろうそくの灯りの前で祈る姿を視聴して、どれだけの人が涙したことだろう。コミュニケーションの語源であるラテン語の「communicatio」は「分かち合うこと」という意味であると、心から納得できるシーンである。『コミュニケーション力』は持って生まれた才能ではなく、トレーニングによって誰でも身につけることができるテクニックであるといわれ、新人教育プログラムでもひっぱりだこのテーマだ。しかし、コミュニケーション・テクニックを教える前に考えなければならないことがある。それは、「分かち合う」ものが「情報」だけでは、コミュニケーションの効果は十分発揮されないということである。情報の裏側に隠れた「感情」を読み取ることができるかどうか、それがコミュニケーションの品質を決めるカギになる。そこで注意しなくてはならないのが、感情を読み取るスタンスの違いである。
『コミュニケーション効果』などの著書もあるジョン・ワーナー博士によれば、コミュニケーションを効果的に行うステップの中で最も重要で最も難しいのが、最初の『Empathizing』だという。「他者を理解すること」などと訳されるが、ポイントは『Sympathizing(同情する)』とは全く異なる行為、もっといえば正反対の態度ということである。