~チームで明るい未来をめざせる~ 解決志向ポジティブアプローチの 具体的な推進方法とは
閉塞感や危機感が人の気持ちに影響を及ぼし、職場の問題解決をも阻害している感がある。
そんな時、お勧めしたいのが、従来から
『 人材教育』で取り上げている「AI」などのポジティブ・アプローチ。
この方法では「つらい現状」ではなく、「輝く未来」をイメージして、
それを実現していくためにはどうすればいいかを考えていくが、
具体的にどう考えていけば可能なのかを紹介したい。
痛みと悲しみを超えて
2011年3月11日、未曾有の災害が日本を襲った。その悲しみと痛みをバネに日本企業は大きく復興へ向け舵を切っている。その方向の多くは新興国などの「グローバル市場」に向いているものの、国内売上のほうが海外売上より高い企業もまだ多く、日本市場は相変わらず重要である。しかし、多くの企業は日本市場で思うように結果を出せず、焦りや諦めの色が出てきている。
原因は「輝く未来」を夢見る力が弱いから
なぜ国内を見る組織が元気をなくしているのか。それは日本再生への高い意志を持ちつつ仕事に当たっているが、実際のマーケットはシュリンク傾向であるからだ。もともと震災前の日本マーケットも長年低成長であったため課題の難易度は年々高くなり、仕事量は増え、目標を何とか達成してもほとんど報酬も変わらない――など、職場で成長や達成を感じることが難しく、「やっても報われない感」にぶち当たっている。
この原因は、端的にいえば「輝く未来」という希望を持っていないからである。そして原因の本質は、希望、想いの先にある「実際に達成された姿」と「そこへの到達イメージ」が曖昧なまま、突っ走っていることにある。仮にイメージを持っていたとしても、このご時世に輝く未来をイメージして共有するのはよくないのではと考え、結局「想い」が空滑りしているのかもしれない。
未来に希望を持てる打ち手ポジティブアプローチ
この状況でも未来に希望を持てるのか?
実は持つ方法は存在する。ポジティブ志向の心理学を活用した組織開発技法で、この『人材教育』でも何回か紹介されている「A(I アプリシエイティブ・インクワイアリー)」と呼ばれる方法である。
この方法は海外を中心に、多くの企業で成功を収めている。代表的には1990年代初頭のフィンランドの例がある。ソ連の崩壊により未曾有の経済危機に落ち込んだ際、国策の一つ、チームワークを引き出す手法として編み出された。そしてノキア等の同国を代表する企業で展開され、大きな成長への原動力となった。
このアプローチの一番の特徴は「問題の捉え方を変える」ことにある。輝く未来を先に具体化し、そこに辿りつくまでに何をどうするかの道筋をつけ、そこに影響するものを「問題」として捉えるのである。
NASAのアポロ計画はそもそも、「人類が月に立つことができる」という未来像を思い浮かべ、それを成し遂げるには何をすればいいかという観点でなすべきことを洗い出し、1つずつクリアしていったから成功した。足元だけを見ていたら「できない理由」ばかり出てきて、成功しなかったのではないかといわれている。脳科学の世界でも、人間の脳は、本気で頭の中で思い描くと本当にその姿になるような意識・行動を取るようにプログラミングするといわれる。スポーツの世界でのイメージトレーニングのようなこのアプローチを実際に日本のビジネス界に応用して効果を上げているケースも増えている。取り入れない手はないであろう。