マーケティング① マーケティングとは何か
今回から複数回にわたり、「マーケティング」について
取り上げる。複数回にわたるのは、マーケティングがあ
らゆる組織や職種にとって非常に重要なテーマであるだ
けでなく、それ自体がカバーする範囲が非常に広いか
らである。
「マーケティング」という言葉は、誰もが日常的に触れるものですが、その内容を問われると、意外と個人によってイメージが異なるものではないでしょうか。そこでまず、マーケティングの定義として、3つの代表的なものを見てみます。
●その1.ドラッカーの定義
経営の神様とも称された故ピーター・ドラッカーは、マーケティングを組織における最も重要な活動の1つとして位置づけました。そんな彼は、マーケティングの目的を「販売(セールス活動)を不必要にすること」としています。
もう少し砕いていえば、この定義は、顧客について十分に理解し、顧客の要求にピッタリと合致した製品やサービスをデザインできれば「無理なセールス活動などしなくても自然に売れる」ということを示しています。
●その2.コトラーの定義
マーケティングの世界で、最も広く知られているのがフィリップ・コトラー(ノースウェスタン大学ケロッグ・スクール教授)です。彼の主張には多くのバリエーションがあるのですが、思い切ってまとめれば、マーケティングとは「顧客を分類し、ターゲットを絞り込み、そのターゲットに対して高い価値を提供し、利益を上げる活動」といったところです。ポイントは、「世界中の人々すべてを同時に満足させられるような商品など存在しない」ということです。であれば、重要な問いは「誰の、どんなニーズを、どうやって満足させるのか」というところに落ち着くでしょう。
●その3.レビットの定義
故セオドア・レビット(元ハーバード・ビジネススクール名誉教授)も、マーケティングの世界では決して避けて通れない人物です。彼による「顧客はドリルを求めているのではなく、穴を求めているのだ(顧客は製品ではなく、その機能を求めているということ)」という名言は、聞いたことがあるかもしれません。そんなレビットによるマーケティングの定義は「顧客を惹き付け、維持するという企業目的を達成するために、総力を挙げてやらなければならない全てのこと」。この定義によって、マーケティング活動とは、マーケティング部のものではなく、その組織で働く全ての人が関わる活動であるという視点が見えてきます。もちろん、人材育成担当者にとっても、マーケティングは重要になります。