達人に聞く報・連・相のコツ
上司に報告する、他部署に連絡する、部下から相談を受ける――
ビジネスでは毎日さまざまな形で報・連・相が行われている。
そのあり方は、職種や業務内容によって異なり、階層によっても変化する。
ここでは、階層も職種も異なる3者の経験談から、
報・連・相のコツや、押さえるべきポイントを探る。
住友不動産
多様な人と接したからこそわかるマネジメントのための報・連・相
一方通行の報告だけで満足しない
賃貸マンション、ホテルなど、さまざまな業態の所管子会社に対して、指導・育成を行う部署に勤めています。各社の課題を洗い出し、方向性を示すことが主な役目。したがって、報・連・相の相手は多様です。各社からいろいろな報告を受けるわけですが、情報は待っているだけではなく、自分から進んで取りに行くことが大切だと思っています。
もちろん、公式な会議のような形で、きちんと報告は上がってきます。しかし、報告は現場から上がってくる途中で、間に入る人の主観が入ってしまうことがあるんです。ですから、可能な限り現場に足を運んで、社員に話しかけるように心がけています。時間があれば現場の社員と一緒に昼食をとることも。「百聞は一見にしかず」という言葉が示す通り、生の情報を得るには現場に行くのが確実。役職が上がるほど生の情報が入りづらくなりますから、一方向の報告だけで全てを判断しないように気をつけています。
報・連・相は判断の材料
報・連・相の目的とは、マネジメント層が正しい判断をすることです。だからこそ、報・連・相ではトップやマネジャー層に現場の実態を伝えることが大切です。
そこで重要なのが、事実と意見を分けて報告すること。上司に対して報告していると、どうしても本人の思いが入ってきてしまうことがあります。つい、語尾に「頑張ります」「大丈夫だと思います」という言葉がつきます。一方で上司は、適切に状況を把握しないと、次のアドバイスができません。何が起きたのか、相手はどういったのかという事実が、まずは上司の知りたいことなのです。
上司へ報告をする際に、どこまで報告すべきか迷う人も多いのではないでしょうか。そしてたくさんある情報から、自分が必要だと思う部分に絞って上司に報告するのではないかと思います。しかし、難しいのは立場によって情報の見方・感じ方が異なること。それぞれ状況に応じた判断が必要ですが、まずは事実に絞って、結果とそこに至った背景を説明してほしいですね。
たとえば、賃貸マンションの営業部員から、お客様との契約が成立しなかったとの報告があったとします。その時に、「成立しなかった」という結果だけではなく“なぜ”契約が成立しなかったかという背景まで聞いてみると、実はそのお客様は賃貸ではなく分譲マンションを望んでいたとのこと。それならば、当社には分譲マンションを扱う別の事業部もあるので、そこをご紹介してはとアドバイスできます。
現場の人は現場の仕事に一生懸命ですから、少し引いた視点から情報を見るのも上司の役割です。そのためにも、適切な事実の伝達が行われるべきではないでしょうか。
話の入り口をわかりやすく
私自身も、自分の上司に報告や連絡、相談をします。その際にいつも心がけているのは、“入り口”をわかりやすくすること。大抵上司は数多くの案件に携わっています。そこで「例の件ですが……」といっても、まずわからないことが多い。そこでちょっと一言付け加えています。私は、「先日の○○会議でお話した△△の件で」と具体的に内容を告げて、「1件相談があります」「報告があります」といった形で、最初に報告か、連絡か、相談かをはっきりするようにしています。
以前私の上司に、「3つ伝える事があります」といってから話し始める人がいましたが、それと同じで、最初に何をどれだけ話すのかを示すことで、相手が聞く準備ができるのです。
いきなり話し始める部下に対しては、話を聞きながら「今のは報告?」と質問します。報告なのか、相談してアドバイスをもらいたいのかがはっきりすると、伝える方も話の内容を整理することができますし、聞く方も対応しやすくなります。これは、意識さえすればできることですし、私が質問するうちに、部下は自然と“入り口”の習慣がつきます。
相手の立場を考えて伝える
住友不動産では、まず結論からいうという習慣があります。入社当時は、会議などでも、よく注意されました。また伝えるスキルを伸ばすうえでは多様な人に接してきたことが大きかったですね。私の例でいうと、再開発に携わっていた際、1日に3回同じ内容の説明を別の人にすることがありました。1回目は地域住民の方に、2回目は税理士の方に、3回目は社内に戻って上司に、という、立場も知識も異なる相手です。そうなると、話し方も言葉も相手によって変える必要があります。建築の専門用語を使って地域の方に説明してもちっとも伝わりませんし、社内で話す際には、使い慣れた共通言語で報告したほうがスピーディーです。