手書きの報・連・相は チーム全員を成長させる
目の前に常にお客様がいる中、
社員同士の報・連・相に工夫が求められる接客業。
百貨店の服飾店店長時代に「報・連・相ノート」を導入し、
同ブランドの売場単位売上の日本一を記録した
北山節子氏に、手書きで報・連・相をすることの重要性、
メリット、そして効果について語っていただいた。
報・連・相が難しい接客業の現場
百貨店の服飾店店長を務めていた時、私は、お客様にとって、お店はテーマパークのようにワクワクする空間でなければならないと考えていた。そのためには、スタッフが自信を持って生き生きと働き、チーム全員でお客様をもてなし、「ありがとうございます」という感謝のまごころをお伝えしたい。それをどうしたら実現できるのかを考えた時に、思いついたのが、報・連・相ノートである。
なぜ、ノートなのか。それは接客業ならではの事情がある。
まず、店頭でお客様をお迎えする仕事の場合、スタッフ同士でコミュニケーションをとるのに苦労することが多い。スタッフ同士の会話は、傍から見ているお客様から、「自分のことを見て笑っているのではないか」「無駄なおしゃべりをしている」と感じられるかもしれないからだ。
また、販売の仕事のほとんどがシフト制で、1日に数時間の勤務のアルバイトもいれば、前後半で勤務時間が分かれることで、顔を合わせづらい社員もいる。
さらに販売員の世界では、個人売り上げが重視される傾向にある。そのため、接客を通して気づきを得られても、個人レベルでしかノウハウを蓄積できず、チームとして気づきやアイデア、お客様情報などを共有して成長することができないのだ。そのため、ある先輩は「覚えられないことは手に書いておきなさい」と後輩に指導し、もう1人の先輩は「何かが書いてある手で商品に触れるなんてもってのほか」というように、人によって全く逆の意見が出てくることもしばしば。
販売員は、膨大な商品知識や、デパートごとに異なる伝票の扱いやマナーなど、ただでさえ勉強しなければならないことが多い。そうした状況でのスタッフの育成は、地道で大変手間がかかる作業となる。にもかかわらず、チームで情報を共有して成長することも、コミュニケーションをとって協力することもままならない――これでは、生き生きと働き、良いサービスを提供することはできない。
そこで、コミュニケーションをとることができ、さらに人材育成にも役立つものはないかと考えた時に思いついたのが報・連・相ノートだったのだ。ノートであれば、お客様から見えないバックヤードで書くことができる。誰でも書き込めるようにすれば、全員平等にすぐ参加できる。さらに、情報をくまなくわかりやすく書くことを心がければ、書き手はもちろん、読む側の育成にもつながるからだ。
1冊のノートで“全て”を共有
この報・連・相ノートでは、仕事に関わることを全て収録することをめざした。仕事に就く前には、自分が非番の際にどんなやり取りが行われていたのかを必ずノートでチェックしてもらう。勤務中も、誰かがノートを書くたびに、「報・連・相お願いします(読んでください)」と小声で伝えたり、目配せをしたりして、情報が新しく加わったことを伝えた。これにより、タイムリーな情報の共有をできるようにしたのだ。
そして、「仕事にまつわるあらゆる情報を共有し、お客様をお迎えするための万全の態勢を整える」ために、わからないことをわからないままにしないことを基本ルールとした。そこでノートを書くうえで具体的に次のようなルールを定めた。