基本シリーズ 基本行動 報・連・相で組織力アップ
「挨拶」「PDCA」「報・連・相」という「基本行動」は、
日々の仕事を通じて学ぶものだ。
だからこそ、日々の仕事の場である職場に、それらを教える土壌があるかどうかが重要である。
本特集では、どうしたら「報・連・相」が徹底される組織ができるのかを考える。
当たり前のことを当たり前にできる組織とは
本誌では、「基本行動」特集として、4月号の「PDCA」に続き、「報・連・相」を特集する。
日本能率協会マネジメントセンターでは、「PDCA」、「報・連・相」に「挨拶」を加えた3つを「基本行動」だと定義している(次ページ図表1)。これらは、円滑に仕事を回すために欠かせない、ビジネスパーソンとしての基本的な約束事である。これらは、“当たり前のこと”であるが、当たり前なことほど、継続して行うことが実は難しい。
当たり前のことを当たり前に行う難しさを、挨拶を例に考えてみよう。あなたは、職場で毎日、大きい声で挨拶をしているだろうか?
気持ちが落ち込んでいる時、また相手の返事がない時でもきちんとした挨拶を続けているだろうか?
自分自身に置き換えてみれば、当たり前のことを続けることの難しさが理解できるだろう。
そして、当たり前のことを当たり前にできる人の多い組織は、もっと少ないだろう。しかしだからこそ、それができる組織は、強い組織といえる。
ではどうしたら、強い組織になれるのか。「PDCA」と「報・連・相」に関する取材を通じて明らかになってきたのは、強い組織は、OJTで「基本行動」を教えることができるということだ。
昨今では、OJTで教えるべき対象領域は、業務知識や業務スキルなどの仕事の側面だけだと考えられがちだ。だが、OJTをもっと広く捉えて、日常の仕事に対する「意欲」や「姿勢」(「基本態度」)も、OJTで教えるべきなのである。そもそも成果主義が導入される以前、日本企業では家族主義といわれるほど、公私にわたり、先輩が後輩の面倒を見ており、基本態度もその中でしつこく教えられたはずだ。今、そういう土壌を再びつくることが求められているのではないだろうか。
個人事例で紹介する住友不動産の田中俊和氏は、同社には「結論から話す」という習慣、社風があり、新入社員の頃からさまざまな場で注意されてきたという。ほとんどのビジネスパーソンであれば、結論から話すべきだということを知っている。けれども、それを机上で学ぶことと、日々の業務の中で指摘されることのどちらがより身につくかは明白だ。結論から報告するということを全員が共有していて、注意することができる組織であれば、新しく入ってきた社員にも、その習慣を身につけさせることができる。
つまり、“組織の中の誰もが等しく一定のレベルで行うことができる”ようになって初めて、その土壌ができたといえるのだ。
もしも今、自社の新入社員に「基本行動」が身についていないのであれば、組織にどのような土壌があるのか、振り返ってみる必要がある。もちろん、土壌を変えることは難しい。一朝一夕に行うことはできない。だが、あきらめずに愚直にやり続けるしか、強い組織になる道はない。