“よそでも通用する能力”がある人材を 育成するのが人事の務め
大阪府に本社を構える東和薬品。同
社は、ジェネリック医薬品の製造販売
を手がける企業だ。ジェネリック医薬
品のニーズの高まりにともない、同
社では企業規模を拡大。わずか4年
ほどの間に、社員数は1.5倍に増加し
た。そうした企業において人材育成
の重責を担うのが相澤直樹人事部長
だ。前職でのキャリアを買われ、
2006年に入社した相澤氏は、2008年
には人事部長に就任した。相澤氏が
人材育成で常に意識しているのが“よ
そでも通用する能力”がある人材の
育成だ。この言葉の裏に隠されてい
る相澤氏の真意とは――。その想い
を伺った。
他社でも通用する自立した人材の育成をめざす
2006年に東和薬品に中途入社した相澤直樹氏が、人事部長に就任したのは2008年のこと。相澤氏は、これまで、目標管理制度の導入や人事制度にリンクした賃金体系の構築、人材育成制度づくりから社員に対するカウンセリングまで、人事関連の業務について、制度設計から運用まで幅広く取り組んできた。
相澤氏が新しい制度を通じてめざしているのは、「よそでも十分通用する能力を持ちながら、当社の企業理念に共感し、当社が好きだから、当社で働いているという人づくり」だという。「人事部長が、“他社に転職できる能力を持て”というのは、矛盾しているように思われるかもしれません。しかし、社会環境が激変する中では、一生、会社が守ってくれるという保障はありません。自分らしく働きつつ、会社に必要と認められるためには、社外からスカウトされるくらいの能力を身につけることが必要なのです」
こう語る相澤氏が勤める東和薬品は、最近よく耳にするジェネリック医薬品のメーカーである。これは、新薬の特許期間(20~25年)などが過ぎたあとに、他のメーカーにより製造・販売される医療用医薬品のことで、新薬と同じ有効成分、効能・効果などを備えながら、新薬より低価格なのが特徴だ。
欧米に比べジェネリック医薬品の普及が進んでいなかった日本だが、近年は、医療費抑制の観点から国も普及を推進しており、需要も拡大している。
1951年、医薬品原材料卸として創業した同社は、1957年に一般用医薬品の製造に進出した後、1965年に、医療用医薬品製造業に転換。ジェネリック医薬品に対する急速な需要拡大に伴い、同社も企業規模を拡大し、2006年に1000人あまりだった従業員数は、2010年には非正規も含め、約1700人と、1.5倍以上に増加している。また、創業家が経営するオーナー系企業ながら、株式を公開し、上場企業としての責任も果たさなければならない。
急成長する企業にとって急務となるのが、人材の育成だ。特に、上場企業となると、それにふさわしい人事制度の構築が求められる。
その重責を任されたのが、相澤氏なのだ。