内定時からの英国研修で 企業理念を体感させる
「英国風PUB」というスタイルの飲食店を運営するハブ(HUB)。
2008年に、過去に行ってきた研修を整理し「ハブ大学」へと体系化させた。
内定者の英国研修や店長育成の研修などを通じて、英国PUBの文化ごと
日本に伝える店舗運営を担う、自律型人財の育成を行っている。
「英国PUB文化」を日本に根付かせるために
1980年にダイエーグループの外食事業として誕生したハブ。神戸の三宮に第1号店をオープンしたのち、親会社の再編を経て、現在、日本の外食産業に「英国風PUB」という新たなジャンルを確立するまでに成長した。
同社では、店舗運営を支えるスタッフを「人財」と呼び、企業内大学「ハブ大学」において研修を実施している。ハブ大学ができる以前も、同社は各種の人財育成施策を行ってきた。ハブ大学は、2008年にそれらを集約したものである。企業内大学があるということ自体、どうしても育成が現場偏重になりがちな飲食業には珍しいともいえるだろう。同社の人財育成について、代表取締役社長の太田剛氏は次のように語る。「英国風PUBをモデルとした当社の事業は、従来のように単にアルコールを提供して収益を上げるだけではなく、“文化”のある空間として、お客様にサービスを提供したいと思っています。そのためには、スタッフにも新たな視点が求められます。単に商売がうまいだけでなく、プラスαの何かを考えられる自律型人財の育成を行うことが必要なのです」(太田氏、以下同)
太田氏が同社に入社したのは1983年のこと。新卒として就職活動をする中でHUB三宮店を訪れ、「英国風PUB」を日本に導入したこの業態に、強い可能性を感じ、入社した。
しかし、その後ハブは親会社の事業再編により、順風満帆とはいえない時期を迎える。太田氏自身も「英国風PUBのスタイルは、本当に日本に受け入れられるのだろうか?」と問題意識を持っていた頃、当時の社長・金鹿研一氏(現・会長)から、「あなたはハブをどういう会社にしたいのか?」と問い掛けられた。その時、太田氏は入社を決意したHUB三宮店の光景が頭に浮かんだという。「やはり自分がやりたいのは、英国の文化に根差した、本当の“英国風PUB”です」と話し、太田氏は1995年、初の渡英を経験する。「 英国のPUBは、会社帰りに少し立ち寄ってリフレッシュしたり、友人と会話をしてコミュニケーションする場であり、1つの文化として生活に根付いていました。生活に密着した形で、人々に活力を与える場だったんです。このPUBの文化ごと、日本の土壌に改めて持ち込みたい――実際に現地で本場のスタイルに触れることで、想いを新たにすることができたのです」
帰国後、太田氏は現地での経験を金鹿氏に報告。金鹿氏をリーダーとして、現在の同社のスタイルに至るビジネスモデル確立に全社的に取り組むことになった。その過程において、人財育成についても徐々に仕組みを構築していったという。