PDCAサイクルのどこで どんなミスが起こるのか ~失敗から学ぶために~
PDCAを回すということは、計画し、実行した内容の成果や妥当性を検証し、
良いものはさらに前進させ、問題点があれば原因を探り、改善策を講じることを意味する。
そこでは常にミスや失敗が付きまとうが、ミスをしてしまった際、
どうすれば再発を防止できるか、事態を改善できるか、そしてそこからどう学べるかを、
ヒューマンエラーの心理学的研究の第一人者である海保博之氏に聞いた。
必ず起きるミスに個人・組織が強くなるには
なぜ人間は失敗やミスを犯すのか。それは人間だから。ミス=ヒューマンエラーと呼ばれるように、ミスは極めて人間的なものである。人間は常に進化しようと考え、絶えず何かに挑戦してきた。挑戦にはリスクがつきもの。したがって、どんなに注意を払ってもミスを犯す。また、これまでつくり上げてきたものを守らなければならない時でも、人間はうっかりしたり、確認を怠ることがあり、ミスを繰り返すのである。
近年、企業の不祥事と呼ぶべきものが頻発している。こうした出来事の背景には、個人、組織レベルでのミスの連鎖があり、それぞれの対処法を、PDCAサイクルの中にうまく組み込めていないことがあると考えられる。また企業の社会的責任が厳しく問われている現在、社会的使命と利益、利便性が対立するケースも少なくない。守るべきミッションよりも利益・利便性を優先した結果、小さなミスが、取り返しのつかない問題へと発展してしまうこともある。
もっとも、ミスは犯さなければよいというものでもない。ミスを完璧に排除したいなら、それこそ何もしないのが一番。しかし、それでは個人も組織も進化しない。日々のPDCAを回し、そこから学んで成長するためには、失敗を恐れずチャレンジすることも必要だ。大事なのはミスに強くなること。PDCAの各段階で、ミスを犯さないように注意するとともに、ミスをしたらそれをリカバリーする術を持つことである。
つまり、PDCAとミスとの問題は、突き詰めれば企業文化をどうつくるのかという問題になる。犯してはならないミスと、恐れてはならないミス。ミスにはこの2つの側面があることを認識し、組織で日常的に回すPDCAサイクルの中にミス対策を盛り込んでいくことが重要なのだ。
ミス対策を企業文化として確立するのは容易ではないが、一度文化として確立した企業は強い。ミス対策を単なるリスク対策の道具にとどめず、企業の成長・発展の道具として活用できるからである。これによって、より高度なPDCAサイクルを、企業の成長と発展の仕組みとして定着させることができるだろう。
PDCAサイクルの各段階で起きるミスと対処の基本
PDCAを回す際には、ミスを防ぐことと、ミスを活かすことの両面からアプローチしていくことが重要である。以下、PDCAサイクルの各段階に沿って、発生しやすいミスとその対策について考えてみたい。
●「計画」段階で起きるミス
~使命の取り違えエラー~
仕事には必ずミッションがある。計画段階で発生する最大のミスは、そのミッションを取り違えること。「使命の取り違えエラー」と呼ばれる問題である。