省察・対話・概念化が PDCAの中で 学ぶカギ
「仕事の中で人が育つ」とはよくいわれる。
しかし、PDCAサイクルで「仕事」を見てみた時、具体的には
どこに学習の要素があり、どうすれば個人と組織は成長するのか。
上司や他者はどう個人に関わればいいのだろうか。
今回の取材企業の取り組みを交えて掘り下げる。
弊誌『人材教育』の主張は昨今、ビジネスパーソンの「基本」に立ち返っている。2010年9月号~11月号で「読む力」「書く力」「考える力」、2月号で「話す力・聞く力」といった「基本能力」をテーマとしてきた。「基本」はいつの時代も、どんなビジネス環境下でも変わらないものである。教育の流行を追うことなく、社員が自ら成長していくための基盤をつくる、ということが重要なのだ。「基本」には、先に述べた「基本能力」の他に、「基本行動」「基本態度」がある(図表1)。この4月号では「基本行動」の中の1つ、「PDCAを回す」ということについて述べ、5月号では「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」を取り上げる。「基本行動」は、円滑に仕事を進めるうえで欠かせない、ビジネスパーソンとしての“約束事”であり、現場の仕事の中で人が育つ限り、「人材育成」「学習」に深い関わりを持つものである。しかし、そうであっても、企業の現場からは「なかなか徹底されない」、または「できない」という声が聞こえてくる。基本ができるかできないかは、社員の年齢や階層、役割に関係がないことも、弊誌アンケート(2010年11月号掲載)で明らかとなった。
そこで今号では、どうすればPDCAのサイクルをよく回せるのかと、PDCAサイクルの中で学習や行動変容はどう起こるのかを掘り下げる。
正しい学びは正しい仕事から
企業では、経営のPDCAから、一つひとつの業務のPDCAなど、大小のPDCAが連関しながら回っている。どの仕事も基本的なプロセスはPlan(計画)-Do(実践)-Check(評価・検証)-Action(改善)。正しくPDCAを回すことができれば、効果的に仕事から学ぶことができる。
なぜなら、PDCAを回し、結果、改善が起きた場合、そこには必ず自身や仕事の仕方に対する気づき、学びがあるはずだからだ。気づきのインパクトが強ければ強いほど、個人は学び、行動を変える。翻せば、うまく気づきを生み、学びが起こる仕掛けをPDCAの過程に組み込めれば、正しい仕事から正しい学びが起こる、ということになる。
PDCAの中に「経験学習」を組み込む
具体的に、PDCAのどこに学びを組み込むことができるのか。コルブの「経験学習モデル」とPDCAのサイクルから見てみたい(図表2)。
経験学習モデルは、「実践」「経験」「省察」「概念化」から成り立っているが、PDCAとの関係を見ると次のようになるだろう
・(計画「Plan」。)