新連載 負けないマネジャーのための孫子 第1回 イントロダクション
これからは「心の時代」といわれるようになった一方、多くの組織ではマネジャーに明確な成果を求め、失敗が許される風土はありません。そんな過酷な状況に置かれるマネジャーにぜひ知ってもらいたいのが「孫子」の教え。第1回目の今回はイントロダクションとして、なぜマネジャーに「孫子」の教えが有効なのか、お話しします。
『孫子』は役に立つ?
1997年、ロンドンに住んでいた頃、オフィス街「Bank」で、大手書店に入った時のこと。入り口に何種類もの解説書が平積みされていました。何だろうと思い手に取ると、それは『The Art of War』──『孫子』の解説書でした。
『孫子』とは、先々月まで「ワンワード論語」で取り上げていた孔子と同じ時代、2500年前の中国・春秋時代に活躍した孫武という将軍が語った兵書です。実体験を本にした、当時としては画期的な内容で、今でも数多の兵法書の最高峰に位置します。
日本においても、古来武将をはじめとして軍人や役人などに読み継がれ、現代では経営者を含むビジネスパーソンも学びを得ています。それはその内容が、単なる戦争での戦略や戦術の域を超え、平時の組織運営や人生哲学にも及ぶ含蓄があるからに他なりません。
『孫子』の主な特徴には、以下の3点が挙げられます。
①好戦的ではないこと
兵法書=戦争好きな人のための本と思われがちですが、そうではありません。孫武は、できる限り戦は避け、避けられない時には、負けないようにどうすべきかを説いています。