船川淳志の「グローバル」に、もう悩まない! 本音で語るヒトと組織のグローバル対応 第6回 全球化時代のグローバルイングリッシュ~日本の英語教育は「課題山積み」~
多くの人材開発部門が頭を悩ませる、グローバル人材育成。グローバル組織のコンサルタントとして活躍してきた船川氏は、「今求められているグローバル化対応は前人未踏の領域」と前置きしたうえで、だからこそ、「我々自身の無知や無力感を持ちながらも前に進めばいいじゃないか」と人材開発担当者への厳しくも愛のあるエールを送る。
なぜテレビ番組の講師をしたのか?
「私は、英語の先生ではありませんが、『英語でビジネス』をやっている者です。すでに『英語でビジネス』を行っている方、あるいはこれから行おうとされている視聴者の皆さんに、同じ立場からアドバイスをしていきたいと思います」
2003年4月から半年間、毎週2回放映されたテレビの語学番組の冒頭で私はこう述べたのには理由があった。当初、私が制作スタッフに提案した番組タイトル、『グローバルリーダーのマインドとスキル』は難しすぎると受け入れられなかった。それどころか、「『グローバル』という言葉には、一部のエリートのようなイメージがある」という時代錯誤も甚だしい反論まで受けた。もっとも、公共放送ゆえに、全国の視聴者から寄せられるさまざまな批判にも耐えなければならない、という先方の立場がわからないわけではない。納得できない私は粘ってみたが、結局、テキスト(62ページの写真)にあるように『実践・ビジネス英会話』という名称で寄り切られてしまった。サブタイトルにどうにか、「Becoming a Leader」と『グローバルビジネス成功の秘訣』という表記を入れてもらった。
番組の初回で放送された私のコメントは、この番組の位置づけを表すものでもあった。第一、文法や語法について細かいことを聞かれても答えられないことはあるので、とても英語の先生は務まらない。
「英語のビジネス」と「英語でビジネス」は決定的に違う。英会話学校の講師、通訳、翻訳者は前者に相当するが、語学番組の視聴者の中に、どれだけこうした「英語のビジネス」をめざす人がいるだろうか?メーカーからサービス業まで、日々「英語でビジネス」に取り組んでいる方が多数派であることは言うまでもない。
私が意図したのは、「英語教育のパラダイムシフト」であった。それは、プロダクト・アウト的な「ネイティブの英語」という幻想に縛られた英語教育から、マーケット・インとも言える「グローバルイングリッシュ」の実践的な習得への移行である。第5回(本誌2014年9月号)の大前研一さんとの対談本『グローバルリーダーの条件』(PHP研究所)でも紹介したように、私自身も高校生までは、まさにこのプロダクト・アウト的な英語教育を受け、使えない英語の勉強に時間を費やしてきた。大学の時、初めて「グローバルイングリッシュ」に触れ、英語を使い始めた。気がつくと英語でプレゼン、交渉、ファシリテーションを行うようになっていた。海外育ちや帰国子女でなくても、英語はやればできるようになる──このことを広く伝えたい、と感じた気持ちは今も変わらない。
また、23年間、さまざまな業種、年代、企業を超えて「日本人の英語の実力」を観察してきた。今回はこれらの経験を踏まえて「英語教育の課題」について問題提起をしたい。
広まるグローバルイングリッシュ
「世界で最も使われているランゲージは何でしょう?」
私が講演、特に海外での講演で聞く質問だ。身振り手振りで話す私の様子を見ている参加者は、「Body language!」と答える。中には、「Chinese!」とか「Spanish!」といった声も上がる。その場合は、この質問がジョークであることを強調する。「答えはBroken Englishです!」。笑いをとった後、言い直すと、「Global English」であると述べる。