CASE.1 ヤフー 管理職の必要条件は“部下の信頼”「型」と「型破り」で上司力を育む
「爆速経営」をスローガンに、2012年4月から新体制をスタートさせたヤフー。組織力の強化をめざし、人事システムを抜本的に改革したという。そこで大きなテーマとなったのが、管理職の能力向上と「型」の問題だ。改革を指揮したリーダーにその実情を聞くと共に、日本の管理職を取り巻く諸問題について語ってもらった。
● 失われた20年 日本の管理者教育は忘れ去られた
「約20年にわたる景気低迷の末、日本企業では管理職が期待通りに育っていないという状況が生じています」執行役員ピープル・デベロップメント統括本部長の本間浩輔氏はそう話を切り出した。
主な原因は2つだ。1つは、会社組織のフラット化が進み、管理職の数が減ってしまったこと。もう1つは、短期的な業績を追い求めるあまり、部下を管理し、育てるよりも、自ら仕事に奔走するプレイングマネジャーが増えてしまったことだ。
プレイングマネジャーとして成果を上げ、昇進はしたものの、ある段階から急に部下の数が増え、慌ててしまう人が後を絶たないという。管理者教育などろくに受けていなかったのだから当然であり、それは長年、コスト削減のために人材育成の予算を削ってきたことの弊害だ。昔はOJTが機能していて、相談できる上司もいた。しかし、「今は相談したい時に上長はいない。いても自分のことに夢中で時間がない。会議ではただ成果を上げろと叱咤されるだけ。そんな状況が多くの企業で見受けられます」(本間氏)。
要するに、余裕がないのだ。グローバル・コンペティションが激化し、企業環境が日に日に厳しくなる状況では、今日や明日を生き抜くことで精一杯。管理者教育などしている余裕はないと、人材育成から目を背けてきた企業が多い。そのことが、社員の定着率の低下やロイヤリティーの喪失を生み、組織の疲弊につながっている。
しかし、「5年、10年先も会社を存続させたいのであれば、管理者教育が根本になることは言うまでもありません」と本間氏は断言する。
● ヤフーの改革1 「デストロイヤー上司」を排除
管理職に関する最大かつ緊急の問題は、稚拙な管理能力によって部下を潰したり、辞めさせたりする上長が増えてしまったことだ。本間氏は、そういう上長を「デストロイヤー」と呼んで目を光らせている。「デストロイヤー」は組織弱体化の主役ともいえる存在だが、経営のトップ層からは認知されにくく、対策が取られにくいという。
誰しも、上司にはいい顔をしようとする。ましてや経営トップの直属の部下は、執行役員や本部長と呼ばれる人たちであり、社内の競争を勝ち抜いてきた優秀な人材だ。当然、管理者としても優秀で、経営トップに何の問題も感じさせない。このため、そのはるか下のほうで起きている問題に経営トップは容易に気づけない。
また、中堅幹部である部長や課長クラスに目を移すと、彼らは直属の部下である課長や係長が業績を上げてくれさえすればよく、実はそれが部下を潰す「デストロイヤー」であったとしても、見て見ぬふりをしてしまう。その結果、「デストロイヤー」は野放しとなる。
この問題を重く受け止めたヤフーは、2年前の人事システム改革で「マネジャーに向かない人に管理職を外れてもらうシステム」をつくった。