OPINION 3 日本型「管理職」はもう通用しない グローバル市場で求められるビジネスリーダーの役割
グローバル競争で苦闘する日本企業。マネジメントにおける海外の変化を見過ごし、世界で戦える人材を育てなかったことが一因だ。だが、古い考え方を見直すことで、グローバルでの戦いは有利になるという。トップカンパニーの人材強化施策に詳しい綱島邦夫氏が、「管理職」から「リーダー」への意識転換のあり方を示す。
「管理職」という概念のない欧米
世界市場における日本企業のインパクトは急速に弱まっている。経済誌『フォーチュン』が毎年公表している「世界の大企業500社」によると、1995年版でリストに挙がった企業の35%を占めた日本は、09年に11%、2014年には8%に下落した。このペースでいくと、6年後のオリンピック・イヤーには2~3%になっていてもおかしくない。
国内トップカンパニーの人事にも、異変が続いている。武田薬品工業では外国人の執行役員が大半となり、国内市場が頭打ちになった資生堂も、ドイツ人の役員を迎えている。その昔、武田薬品工業、資生堂の経営幹部に外国人が就任するなど、誰が想像しただろうか。一方、日立では米3Mの会長(ジョージ・バックリー氏)を含む3名の外国人を社外取締役に迎えた。バックリー氏は取締役会で、日立の営業利益率の低さ(5%)について、非常に厳しい発言をしたという。
欧米では利益率15%が優秀とされ、10%で合格ライン。1桁まで落ちれば、役員は解任される可能性がある。
高度成長期は、国民体育大会やアジア大会で優勝さえすれば、その地位は安泰だった。しかし、今はオリンピックで勝たないと利益が出ない。世界市場で通用する人材を、ほとんどの日本企業は育てられなかったのだ。
日本企業では伝統的に、新入社員を振り出しに、主任、課長、部長、役員という具合に、段階的な流れを想定した人材育成に取り組んできた。そして部下をマネジメントし、育てる立場にある人を「管理職」と呼んでいる。
ところが、欧米型の企業には、日本で言うところの「管理職」の概念はない。入社した時点で「あなたはリーダーです」と伝え、マネジメント能力と、リーダーシップの両方を当然のように求める。こうした差を意識せずに、「管理職」をリーダーから切り分けて考えるのは危険である。
リーダーが越えるべき3つの壁
社員が本物のリーダーになるため、越えねばならない壁が3つある(図)。
1つめは「組織リーダーの壁」。自分ひとりの技量にとどまらず、部下をうまく使って成果を上げられるか。2つめは「戦略リーダーの壁」。限られたリソースの中で、より効率的に仕事を進めるスキルやノウハウ、ビジネス知見があるか。生産性のボトルネックになっている問題に気づき、解決のための提案ができるか。3つめは「チェンジリーダーの壁」。時代と共に変化する成功要因に気づき、既存のビジネスモデルを改革できるか。
欧米企業では、これら全てを越えることが必要条件で、1つでも欠けると世界で勝てる経営リーダーの条件を満たさないと判断される。
ビジネスの達成度を測る指標も、日本ではPDCA(PLAN,DO,CHECK,and ACTION)が一般的だが、欧米ではPOIM(PLAN,ORGANIZE,INTEGRATE,and MAJOR)である。
米GEは60年前、企業の持続的成長を支える経営リーダーにはPOIMが必須であると気づき、世界初の企業内研修所を創設した。そこでつくり出されたノウハウが、今日の世界のビジネススクールにも継承されている。
経営リーダーの重要な要件は、POIMの2つめ、ORGANIZEだが、残念ながら、日本企業のマネジャーはここで停滞しているケースが多い。