OPINION 2 マネジメントを進化させる「型はずし」 メンタルモデルの克服で部下との新しい人間関係を構築する
部下育成が思うように進まず、プレイングマネジャーとして目先の仕事に追われている管理職が増えている。オーセンティック ワークス 代表取締役 中土井 僚氏はその原因を市場環境の変化とマネジメントのズレに見出し、ピーター・センゲの理論「学習する組織」の切り口から、「型はずし」の要点を説く。
現場で起きている劇的変化
部下に仕事の状況を聞いても要領を得ない。「考えてみて」と促しても全く答えが返ってこない。指示を細かく出さないと部下が動かない。部下からの報告では現場の問題がわからないので、自分が現場に下りていってプレイングマネジャー化し、目先の仕事に追われている。
そういう悩みを抱える管理職が年々増えているように思う。原因は近年の市場環境の変化と管理職のマネジメントの間に大きなズレが生じているからだ。そのギャップを乗り越えない限り、状況はますます悪化するだろう。
今回の特集のテーマである管理職の「型はずし」──「学習する組織」のピーター・センゲの言葉を借りれば「メンタルモデルの克服」ということになろうが、その手法はマネジメントを変える可能性を持っている。
言ってみれば、「型はずし」とは、自分の過去の経験に依存したマネジメントのパターンを越え続け、いかに柔軟性と広がりを持ったマネジメントを実現するかという行為に他ならない。
そこで、ここでは柔軟で広がりのあるマネジメントに転換するための手法を説きたいと思うが、まずは実際に現場がどう変わってきているかに注目したい。自分の時代とは環境が様変わりしているのだ、と知るところから入っていこう。
これまで管理職になる人は多かれ少なかれプレイヤーとしての実績を買われ、現在のポジションに就いている。そのため「自分と同じ程度には育てられないかもしれないが、自分の7掛け、5掛けの仕事ができる部下を育成すればいいのであり、あとは行動量を増やせば業績も追いついてくる」という考え方がある。
しかし、消費者の価値観が多様化し、少子化と所得の伸び悩みで市場が縮小している中、上記のような意識では部下は戸惑うだけだ。現場は答えがない中で答えを見つけなければならない。従来は優秀なプレイングマネジャーが暗黙知の中で行ってきたことである。それが一般の社員にも求められる時代になったのだ。それだけでも困難であるのに、市場から要求される品質が、もはや高付加価値を飛び越えて超高付加価値というレベルにまで達している。
こうした状況下では、部下は現場で市場の変化を察知し、暗黙知の中で答えを出そうとしているので、全てを報告できるわけではないし、マネジャーにしても現場から離れたところで細かく指示できるものではないと知っておく必要がある。
複雑で要求水準が非常に高い市場環境に対応するには、部下が自分の頭で考え、自ら行動する「自考自動」によって答えのない中で答えを見つけるしかないのだ。今日の管理職は、部下の自考自動を支援するマネジメントを発揮しなければならない。マネジメントもまた進化を求められている。