TOPIC 2 特別インタビュー:従業員エンゲージメントとタレントマネジメントの新潮流相互コミットメントで生まれる会社と従業員のエンゲージメント
これまで日本企業は、従業員満足を高め、企業へのロイヤルティを持たせることを重視してきた。しかし、グローバル規模で雇用の流動性が高まり、個人が自律的キャリアを求める中で、もはやそれだけでは十分ではない。そこでカギを握る概念が、「エンゲージメント」だ。今回はエンゲージメントに関する第一人者であるボブ・ケラー氏と、タレントマネジメントソリューションを提供するシルクロードテクノロジーのCMO、ウィリアム・エド・ヴァセリー氏に、従業員エンゲージメントについて聞いた。
グローバルで業績を生む従業員エンゲージメント
外国人従業員の採用、グローバル人材の育成といったニーズが高まる今、「エンゲージメント(Engagement)」に関する新しい定義が注目され始めている。
エンゲージメントの定義はさまざまあるが、25年にわたりエンゲージメントに関する調査研究、施策の策定・実施を行ってきたボブ・ケラー氏は、エンゲージメントを「企業が高パフォーマンスを生み出すために、従業員の潜在能力を引き出すこと」と定義している。「今日ほど、企業が従業員のエンゲージメントを高める必要性を問われている時代はありません。今いる従業員のモチベーションを高めるために、そして将来の従業員を雇用するために、企業が従業員のエンゲージメントを引き出すことが不可欠だと考えています」(ケラー氏、以下同)
この背景にあるのは、いうまでもなくグローバル化という大きなシフトチェンジである。「これまで企業がダイバーシティを促進するにあたって目的としていたのは、職場の平等性を保つことでした。しかし今求められているのは、イノベーションを促進するためのダイバーシティです。ダイバーシティの促進によって、多様な人のアイデアを取り込んでイノベーションを起こし、グローバルで活躍できる力を持つ。これが今企業に求められているのです」
もう1つの大きな変化に、テクノロジーの進歩がある。今や、誰もが簡単に世界中の別々の場所にいる人々とオンラインで交流することができる。こうした状況において、企業の人事・人材開発担当者は、従業員となる人的資源はどこにいるのかを広く見据えて活動していく必要があるだろう。「これは、人事・人材開発担当者にとってまたとない絶好のチャンスです。従来の人事・人材開発担当者の役割は、どちらかというと企業の発展を側面から支援することでしたが、これからは、人事のプロこそが先頭に立って、企業のグローバル化を牽引する役割を担っていくことができるからです」
実際に、プライスウォーターハウスクーパーズによる2011グローバルCEO調査の結果によれば、83%の役員が人材管理戦略を最大の懸案であると答えているという。その時に重視すべきポイントが、企業が従業員の潜在能力を引き出し、従業員がアイデアと物事を解決する能力を持って企業にコミットする相互関係、「エンゲージメント」なのである。