企業事例3 未来工業 モットーは「常に考える」。改善提案で問題発見の感度と視点を養う
岐阜県大垣市に本社を構える電材関連メーカー、未来工業。取り扱う製品の多くが業界で高いシェアを占め、創業以来黒字決算という経営面ではもちろん、『常に考える』という経営理念に基づく、数々のユニークな施策で知られる。問題改善提案制度もその1つで、近年は年間1万件を超える提案があるという。同社では、社員が自発的に問題を感知し、提案し、改善することが、日々の仕事の中に組み込まれているのだ。社員自らが問題を発見し、改善する力を育てるにはどうすべきか。同社の仕組みを聞いた。
「常に考える」ことで問題が発見される
年間約140日の休日日数、定年70歳、報・連・相禁止……数々のユニークな施策で知られる未来工業。創業以来赤字なしという優良経営企業としても有名だ。
社員数780 名という規模で、製造・販売する商品は約2万種類。産業財産権の保有数は3058 件(特許559件、意匠2216 件、商標283件)にも上る(2011年時点)。
これらの商品の中には、社員の提案によって生まれたものも多い。同社独自の改善提案制度によって上げられる提案の数は、年間約1万件超。内容は多岐にわたるが、上司の悪口と給与の不満は禁止という以外、一切の制約はない。中には、1人で年間200 件もの提案をした従業員もいるという。
なぜ、これほどまでに活発な改善提案がなされるのだろうか。同社の活動について、総務部 総務課 課長の阪本誠氏は次のように話す。 「社員が自主的に考え行動できるような環境をつくり、いかに問題発見と改善への意欲を持たせるか。この点が最も大事だと考えています」(阪本氏、以下同)
環境を整え、社員の意欲さえ引き出せれば、自発的な行動が生まれ、問題発見、そして改善につながる――同社のこうした取り組みの根底を支えるのが、「常に考える」という経営理念だ。同社の社屋や工場内には、至るところにこの「常に考える」という言葉が掲示されている(写真)。
「問題解決のための手法や理論を学ぶことも大切ですが、自分が仕事をどう進めていくかは自分で考えなくてはいけません。それには、まず認識の持ち方から変えていくこと。たとえば『不景気だから』という言葉に惑わされて考えるのをやめていないか。慣習だからといって漫然と仕事をしていないか。こうした物事の見方を変え、行動に移すということが、『常に考える』を実践するということです」
仕事が楽になるから改善提案が生まれる
提案制度の詳細を見てみよう。提案はまず各職場に設置されている「提案箱」に集まる。それらの内容を各職場で確認し、職場の責任者(上司)が実施する・しないを判断。職場で解決できない問題であれば、該当する部署に依頼することになる。
「改善提案が特に多いのは工場ですが、事務職の社員からも提案が出るように、毎年1回は『提案月間』を設け、改善提案の提出を促しています。こうした呼びかけを行うのは各部署から1名ずつ選出された提案委員ですが、普段は特に、提出を促したり、呼びかけたりする活動は行っていません」
にもかかわらず、改善提案は、制度開始以来減ることなく集まってくる。その大きな後押しとなっているのは、提案を実施する・しないにかかわらず、1件当たり500円の参加賞が支払われることである。