企業事例2 東洋インキSCホールディングス QCサークルの復活・浸透で問題を共通言語で語れる職場をつくる
印刷インキの製造・販売を中心に、多彩な事業を展開している東洋インキグループ。同社では、生産現場のリーダー育成と問題発見力・解決力の強化をめざし、一度は廃止していたQC手法を学ぶためのカリキュラムを2010年から再開させた。生産現場の社員の問題発見感度を高める「QC手法実践プログラム」とはどのようなものか。同社の研修を紹介する。
階層別・職種別に鍛える問題発見・解決力
1896 年に創業し、オフセットインキ、グラビアインキ、塗料、樹脂、粘接着剤、塗工材料、顔料、着色剤等多彩な事業を展開している東洋インキグループ。同社では、階層別教育の1つとして2006年から問題発見・問題解決に関するカリキュラムを導入し、全社的に問題発見・問題解決の能力向上をめざしている。
同グループを牽引する東洋インキSCホールディングスのグループ人事部人材開発グループ グループリーダーの関野純二氏はこう話す。
「当社では、階層別に全職種共通の問題発見・問題解決のプログラムを用意し、社員が自ら問題を発見し、それを解決していくための能力強化に力を入れています。また、営業・技術・生産・スタッフというように、職種別のカリキュラムも用意しています」(関野氏)
その中でも今回は、2010年から開始した、生産部門の20 代後半から30代後半のリーダークラスを対象とした実践型プログラム「QC手法実践プログラム」を取り上げる。同社では、2007年に創立100周年を迎えたのを機に、「東洋インキ専門学校」を設立。これは、会社全体のレベルアップを図るためのカリキュラムを複数用意した、同社独自の企業内学校のことであり、この「QC手法実践プログラム」もここで行われているものの1つだ。
このプログラムは約8カ月にわたり、職場単位でQC手法を実践しながら、問題発見・問題解決力を養っていくもので、講師は、高い専門的知見を有する社員が務める。具体的な内容と、プログラム実施の背景について、以下に見ていきたい。
モノづくり現場に復活させたQC手法
「当社では1996 年までQC手法に関する教育や表彰制度を用意し、全社的に取り組んできました。しかし、全社にQC手法が浸透していく一方で、問題解決や改善より、表彰が目的になっている風潮があるのではないかという疑問が浮上したのです。そうした迷いとともに、QC手法を学ぶ機会は次第になくなっていました」(関野氏)
QC手法自体が悪かったのではなかったが、同社だけではなく、日本の多くの製造業でQC サークル活動をやめる動きが起きた。このことは、のちに弊害を生む。
かつてQC手法の教育を受けていた最も若い20 代の社員も、今では40代。QCに関する教育を受けていた社員のほうが少数派という状況では、改善活動を行っていくうえで、全員が共通言語で語ることが難しくなっていくのだ。
そこで同社では、生産部門においてQC手法についてしっかりと学ぶ機会の必要性を再認識。「QC手法実践プログラム」として復活させるに至ったという。
「モノづくりには改善が欠かせません。しかも改善をするためには、情報(言語)の共有が大きなポイントになることは、現場の一人ひとりが実感していました。ですが、そうした改善活動を社員の自主的な判断だけに委ねることは、限られた人員で大量の仕事をこなすことが求められる今の時代には難しい。会社が教育制度としてきちんと環境を整備し、現場に根づかせていくことが必要ではないかと考えています」(永田氏)
同プログラムの講師を務める永田氏はこう話す。