Opinion 1 大きな目標を持つことが問題発見感度を高める
問題発見とは何か。問題発見感度を高める方法はあるのか――。それは、大きな夢を持つことだ、と日本学術振興会理事長で工学博士の安西祐一郎氏はいう。では、どうしたら、大きな夢や目標を持てるのか。それは生きることだ―― 問題発見・問題解決のメカニズムと鍛え方について脳科学にも詳しい安西祐一郎氏に聞いた。
目標・手段=問題発見・解決
私たち人間は、日々、難しい“問題”にぶつかり、それをどうにかこうにか解決しながら、一つひとつの仕事をこなしている。皆、意識する・しないにかかわらず、常に問題解決者として生活しているわけだが、そもそも“問題”とは何かを考えてみたい。
“ 問題”とは、「夢」「希望」「願望」「目的」などといった、目標を達成できない時に生じるものである。つまり、目標があって初めて、問題があるというわけだ。そもそも目標や夢のない人は、何の問題も発見できない。
そして、夢や目標を達成できないがために生じる問題とは、達成するための“手段”がわからないということである。たとえば、「10 年後、当社は世界に通用するグローバル企業になる」という“目標”があったとする。この段階では、どうすればその目標を達成できるのかという“手段”まではわからない。だから、問題なのである。
つまり、この“目標”と“手段”を合わせたものこそが、私たちが日々直面している“問題”の正体。
“問題”を発見するとは、目標と手段を発見することであり、すなわち発見した時点で「問題解決」もできることがほとんどだ。
ただ、目標と手段の両方が揃っていないこともある。10年後にグローバル企業になるという目標自体が、間違った目標であるかもしれないからだ。
ようするに、目標や手段がわからない曖昧な中から、それらを見出していくことが、「問題発見・問題解決」ということができるのだ。
問題を発見するとはどういうことか
では、私たちは、どのように問題発見を行っていけば良いのだろうか。
問題を発見するうえで、最も重要なのは、「目標」を見つけ出すということだ。目標が明確になれば、それを達成するための手段もわかる。
だが、大きな目標の手段は、この手段より下の次元の目標になっているというケースがほとんど。目標と手段は、“入れ子”のような関係になっている(図表1)。
たとえば、「10年後にグローバル企業になる」という目標を達成するための手段として、「グローバルに通用する人材の育成プログラムをつくる」。これは手段だが、プログラムをつくること自体が目標ともいえる。さらにそのプログラムをつくる手段として、他社で行われている同様のプログラムの事例を収集する――というように、グローバル人材を育成するプログラムをつくるということは、手段であると同時に、目標そのものにもなっているという関係だ。そして、大きな目標の下についている目標や手段ほど、見つけやすいし、解決しやすい。
だから、問題を発見するために大事なことは、大きな目標を持つということになる。