~アクション・ラーニング新展開~ “三位一体”での推進が 改革を継続させる
より実践的な学びを意識して、アクション・ラーニングを行う企業は多いだろう。
しかし、研修中に立てた戦略案は研修後、実際にしっかりと実行に移されているだろうか?
絵に描いた餅になってしまうといった声がよく聞こえてくる。
そこで、某企業が実施した次世代型アクション・ラーニングを紹介したい。
三位一体型――企業内研修所と外部コンサルタントが参画した事例である。
次世代型へと進化したアクション・ラーニング
従来の企業研修の基本的な発想は、学習したことを現場で業務遂行に生かしていくというものである。しかし、研修と現場との間に距離が生じがちであり、本当に学んだことが生かされるかは不明である。よって、その問題を乗り越えるものとして近年、アクション・ラーニングが注目されてきた。
アクション・ラーニングでは、実際の現場の課題に対し事業戦略案などを検討し、問題解決や業務の創造を行う。そのことによって研修と現場との乖離を解消し具体的な行動を促すことが期待されている。しかし、依然として大きな問題が残っている。研修中はしっかりと戦略案づくりがなされても、研修後にそれが実行されないという事例も散見されるのである。しかし、今回紹介する事例は、その問題をも乗り越えたものだ。製造業A社※1が取り組んだ経営改革プロジェクト(以下PJ)に、アクション・ラーニングという形態で企業内研修所※2と外部コンサルタントが参画したという事例だ。次世代型アクション・ラーニングともいえる本事例を紹介し、前述した問題意識への検討を行ってみたい。
プロジェクトの目標と方法
A社でのそのPJは、2009年10月からスタートした。それまでA社では、特定の数社からほとんどの受注を得る収益構造であったが、昨今の景況の悪化から受注額も漸減してきていた。今回のPJは、継続的に受注を得ていた既存取引先への依存を低くし、新たな取引先の開拓とそれに向けた体制の変更という大きなテーマに挑むものである。景況の厳しさからの苦心だけでなく、既存取引先からの受注が減っていく状況下での社員のマインド低下も、PJの大きな壁として立ちはだかっていた。このことに危機感を感じた社長を含む役員全員で、PJの初期のメンバーは構成された。PJの目標は、上記の課題を鑑みて戦略ビジョンを策定し、次期5カ年計画として発表するとともに、その内容を実施するためのスタートを切ることである。PJには新たな顧客開拓とそれに対応した事業づくり、体制づくりの案が求められた。というのも、A社は大きく4つの事業部に分かれ、それぞれが既存取引先への対応を中心に組織づくりがなされていたためだ。そこでA社ではこの次期5カ年計画を経営改革と位置づけ、これまでとは違う新しい検討手法とチームづくりを試みた。
今回のPJで策定されるのは、会社全体の大きな方針を定める戦略ビジョンであり、個々の事業部が実際に推進する戦術としては具体性に欠ける内容となることが当初より想定されていた。よってPJは当初より、戦略ビジョン策定後は各事業部にて具体的な戦術案を検討し、実施に向け現場に反映させるというスキームを考慮しながらスタートした。