経営学を人材育成に 応用するとは
前号の第1回では、経営は理念の共有で成り立つもの
であり、人材開発のフォーカスもそこにあるべきという
こと、そのために人事は、「成長物語の社内広報」の
役割を担うことを紹介した。
今回は、そもそも経営学とは何かを明らかにしたうえ
で、経営学と人材育成の関係について考えていく。
人事・教育者のための「ちょっぴり経営学」誌上講座第2回です。今回は、そもそも経営学とは何かを明らかにしたうえで、経営学と人材育成の関係について見ていきましょう。
経営学というと、どのような印象を持たれるでしょうか?
即座にハーバード大学などに代表される「ビジネス・スクール」を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、経営学と商学との違いをたずねられると、誰もが答えに窮すると思います。広くいえば、経営学とは「組織の運営効率(経営効率)」を考える、実学寄りの学際的な学問のことで、学習科目としては「マーケティング」や「ファイナンス」以外にも、この『人材教育』の読者に馴染みの深い「人的資源管理(HRM:HumanResource Management)」「知識創造理論」や「リーダーシップ」、さらに「オペレーション」や「物流」、果ては「経営戦略」までも含まれます。あくまでも一般論ですが、多くの大学に設置されている経営学部は「将来の経営者」を育成することを目的としているところが多いようです。
これに対して商学とは、経営学よりもずっと経済学に近く、もっと個別の業界(広告、貿易、金融など)を深掘りしたり、お金という視点からは、ファイナンス(未来のお金を扱う学問)よりもむしろ、会計学(過去のお金を扱う学問)寄りだともいわれることがあります。一般に大学の商学部がめざしているのは「理論のわかる実務家」の育成であり、この意味で「経営者の育成」をめざしている経営学部との違いが見られます。
とはいえ近年では、どこか古い響きのある「商学部」を、経営学修士号(MBA)という、よりキャッチーな言葉の台頭に合わせて「経営学部」と改名する大学も増えてきており、日本における商学と経営学の違いは、実際の大学のカリキュラムを見る限り、非常にわかりにくくなってきています。さらに、欧米のビジネス・スクールでは「経済学」をカリキュラムに含めるところもあり、かなり控えめにいっても、商学と経営学の定義には混乱が見られます。
この連載の目的は、人材育成担当者が、現場で発生している問題の解決により高いレベルで寄与できるようになることです。ですので、この目的に対して有用であるかぎり、商学的なものも経営学の範疇とし、あまり厳密には区別せずに話を進めていきます。