現場力の強化をめざす 新たな教育体系を構築
大手非鉄金属メーカーの三菱マテリアルでは、
2010年4月に人財開発センターを設立し、新たな
教育体系を構築。人財育成の一層の強化に乗り出した。
そこで注力されているのが、
技術者向けの知識レベルの底上げだ。
1年目の現在、ヒューマン系のスキルから
工学基礎・専門講座まで体系的に
学ぶことができる仕組みが運用されている。
見直しに当たり社内外で事前調査を実施
企業にとって、現在の人材開発を取り巻く状況は危機的だといわざるを得ないだろう。現場の技術者が発展のカギを握る素材メーカーにとっては、なおさらである。
まず、学校教育のあり方が変わってしまった。本来は学生時代に身につけていてほしい学問領域でも、必修科目でなくなったりカリキュラムが緩やかになってしまった。その結果、十分な基礎知識を身につけないまま、社会に出てきてしまう。また、採用の難易度が上がっている。ビジネス環境の変化に伴い、技術的な知識を有する学生が活躍できる場は、製造業以外の業種にも広がっている。優秀な学生が商社を筆頭に、他業種へ流れてしまうことが少なくない。
こうした状況には、業界大手の三菱マテリアルといえども危機感を持たざるを得なかった。人材を、「人財」としている同社だけに、その感覚はより強いものだった。そこで、同社では技術系スタッフの底上げを真正面から取り組み、全社教育で補足するために教育体系の見直しを行った。
そのために最初に行ったのは――「体系を構築する前に、まずは現場実態を把握しようと、電気、自動車など製造業各社を訪問、分析調査を行ったのです」
そう語るのは人財開発センターの鈴木明氏。訪問先は日本を代表する企業ばかりだったが、担当者は口々に学生の基礎力不足を語ったという。技術畑をめざそうという者が中学校で習うはずの三角錐の体積の求め方すらわからない、話す力・聞く力が不足しコミュニケーションできない、現場では人員削減に伴いOJTの機能が低下し、部下育成もできない──など、問題は少なくなかった。
体系に横串を通す育成観
このような状況を受けて、本格的に技術者教育のための体系構築に乗り出した同社。そこから1年半もの準備期間をかけて、構築へのプロセスを踏んでいった。
他社訪問による現状分析に続いて、自社としての人財育成方針を策定。技術スタッフとして「期待される人物像」に必要な教育課目を抽出した。
次に人財育成方法・手段を検討。現場で発生する複雑な問題の解決に必須な教育カリキュラムを設定していった。具体的には、