中長期事業計画の達成のために 階層別教育を刷新する
総合医療機器メーカーのジェイ・エム・エスは、
中長期事業計画の達成のために、階層別教育を一新した。
各階層が役割をまっとうすることが、
中計達成につながるからだ。
部長や課長のあり方を問い、人事制度の変革まで
影響を与えた階層別研修の概要を紹介する。
市場環境の変化を前に迫られる企業の変革「私たちが育成しなければならないのは、“変革型人材”です」
ジェイ・エム・エス(以下、JMS)人事部 人事課長である寺尾昌幸氏は人材育成の理念をそう語る。
JMSは輸液セットなどの総合医療機器で業界上位のシェアを誇るメーカーだ。そんな同社がここ数年、課題としているテーマが組織と個人の変革である。めまぐるしく変化する環境に対して受身で行動するのではなく、変化を自ら起こし、新しい付加価値を生むことのできる “変革型人材”の集合が、JMSのめざす新しい企業の姿だ。「いわれたことを忠実に実行するのは社員の基本です。しかしそれだけではなく、自分のやるべきことを自分で考えて、自分でスタートさせなければならない。これは上司や部下に関係なく、組織の上から下まで全員に共通する理念です」(寺尾氏、以下同)
高齢化社会を迎え、これから医療機器の需要は大きく伸びることが予想されている。そのチャンスを活かすために変革型人材が必要なのだ。「現状当社は、業界トップシェアのメーカーには及びません。だからこそ転機を迎えるであろう今が、変革の時期なのです」
こうした人材育成目標を持つ同社が、2009年に見直したのが、階層別研修だ。そのきっかけとなったのは2009年4月に発表された中長期事業計画「Challenge2015」である。
事業計画の推進と人材育成を両立する市場に訪れたチャンスを捉えるために、「Challenge2015」の達成はJMSにとって過去にないほど重要なテーマだった。
同社は過去にも二度、中計を策定してきたが、100%達成されたことはなかった。それは経営者の想いや意志が、各部門、各社員の行動計画まで十分に落とし込めなかったことに起因する。
そこで2009年は「Challenge2015」を社員一人一人に浸透させるために、階層別研修を一新した。中計は、会社の方針を示した大きなビジョンである。当然、現場とは乖離がある。だが、中計を実現するためには、大きなビジョンを実行可能な行動計画におろし、現場に対して具体的な指示がなければならない。