新連載 グローバルビジネスに役立つ教養の本棚 第1回 グローバル人材育成に必要な最後のピース
グローバル人材には、“教養”が必要らしい、アメリカのエリートは教養が豊からしい――
まことしやかにささやかれる、教養の必要性。だが、それは本当だろうか?
これまで漠然としか語られてこなかった教養の意義と学び方について迫る。
外国人と深い対話をするために
グローバル人材として活躍するためには、語学力は必要条件に過ぎません。十分条件として、外国人と深いレベルで対話する力が必要です。この、外国人と深いレベルで対話する力は「経験」と「教養」によって、育まれるものです(図表1)。
たとえば、赴任先の外国で「日本の戦争責任についてあなたはどう考えているのか?」と真剣に問われた時、どのように話し合うことができるでしょう。
経験により鍛えた度胸と交渉力で「まあ、そう難しいことをいうな、私とあなたの仲じゃないか」と収めるのもひとつの方法です。しかし、教養を身につけていれば「自分はこう考えている、あなたの考えも聞かせてほしい。話し合おう」という真の対話に持ち込むことができ、さらに信頼を深めることも可能になるでしょう。特に相手が外国人のエリート層である場合、後者の展開に持ち込めなければ軽く見られてしまう可能性もあるのです。
この連載では、特に「教養」に焦点を当て、グローバル化時代のビジネス人として何を学習したらよいのか、および、その入り口となる書籍を毎回、具体的に紹介していきます。
私はここ数年、人材育成や人事制度設計の仕事をしながら、「ビジネス」と「教養」の関係について考えてきました。この問題を語る時、大きく2つの課題があると感じます。
1つは、両者を結びつける回路があまり具体的に説明されていないことです。「教養」は仕事に役立つ、ということがあまりにも漠然と語られ過ぎています。何がどうして良いのか、もう少し明確にする必要があるでしょう。
もう1つは、「(グローバル)ビジネスに役立つ教養は具体的に何?どこでどうやって勉強すればいいの?」ということです。
連載を通じて、この2つの問いを掘り下げていきます。