連載 酒井穣のちょっぴり経営学 第12回 イノベーションを守る特許について知ろう
前回は、持続的な企業経営を考えるうえで重要な「イノベーション」を取り上げた。画期的(破壊的)なイノベーションがなぜ発生しにくいのかについて学んだ。今回は、そうした企業の智慧を守るための「知的財産権」のうち、「特許」について取り上げる。特許マインドを醸成することが、現代の企業にとって非常に重要なことであるからだ。
なぜ特許が重要なのか
人材教育の読者であれば、労務関係の法務知識はそれなりに理解されていることと思います。経営レベルで物事を考える時、労務的な知識はもちろん重要ではありますが、それだけではなく、知的財産権、特にその中でも「特許」に関する基本的な知識も持たなければなりません。
まず、知的財産権とは何でしょうか。アイデアなど無形なものの中にも、財産的価値を認められ保護されるものがあります。法律「知的財産基本法」では、「知的財産権」とは「特許権、実用新案権、育成者権、意匠権、著作権、商標権その他の知的財産に関して法令により定められた権利又は法律上保護される利益に係る権利をいう」と定められています。
では、なぜその中でも特許について知っておくべきなのでしょうか。
経営学の文脈では、特許は多くの場合、自社のイノベーションを保護するという視点で語られます。厳しい競争社会においては、自社と他社を差別化することがどうしても必要です。そして、現代社会において、このような差別化のコアになっているのは、投資をして開発した、何らかの技術、イノベーションであることがほとんどです。そんな差別化のコアが競合に簡単にコピーされてしまうとするなら問題でしょう。そこで自社のコア技術を、競合にコピーされないように守る手段が「特許」というわけです。
特許になる発明とは何か
特許が認められる要件にはさまざまなものがあるのですが、その中でも特に重要なのは(1)新規性(=世界でまだ発表されていない技術であること)と(2)進歩性(=誰もが簡単に思いつくような技術ではないこと)の2つです。